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ジャンボ機を「空飛ぶ実験室」に徹底改造、ロールスロイスによる計画が進行中|WIRED.jp - WIRED.jp

カンタス航空の旅客機だったボーイング747-400型機を、ロールスロイスが買い取って徹底的な改造を施そうとしている。その狙いは巨大なジェット機を、ジェットエンジンの開発に使う「空飛ぶ実験室」に改造することだ。

WIRED(US)

ワシントン州モーゼスレイクに着陸するボーイング747-400型機。この飛行機は、ここで民間航空機から“空飛ぶ実験室”へと変身する予定だ。PHOTOGRAPH BY J CRAIG SWEAT/AEROTEC

2019年10月半ばのことだ。シドニーからロサンジェルスへ14時間かけて向かうカンタス航空のフライトは、ほぼいつも通りだった。乗客に提供されるピーナッツに、機内で観る最新の『スパイダーマン』。そして落ち着きのない幼い子どもや、飲みすぎのビジネス旅行者がいる。

ところがこのフライトの4日後、このボーイング747-400機はワシントン州シアトルから3時間ほど東にある施設にあった。そこでは、機体の“非カンタス化”が始まっていた。

この“非カンタス化”とは、航空宇宙に関するテスト・開発・設計を行う企業であるエアロテック(AeroTec)の社長リー・ヒューマンの表現だ。客室のディスプレイからはカンタス航空のロゴがはがされ、カンタスを特定できる電子機器は取り外された。これで、すべてがロールスロイスの所有物になったのである。

「この飛行機は過去19年間、カンタス航空で素晴らしい時間を過ごしてきました」とヒューマンは言う。「これからは空飛ぶ実験室として、第2の時間を過ごすのです」。エアロテックはこの機体を生まれ変われせる任務を、ロールスロイスから請け負っているのだ。

すべてがスケジュール通りに進めば、この747は2年後に、ロールスロイス製エンジンの空飛ぶテスト環境になる。新たに計器やセンサー、実験用ジェットエンジンを搭載した機体をロールスロイスと契約したパイロットが飛行させ、将来そのエンジンが動作するような条件でテストを行う。その間、機体後方のステーションにいるエンジニアたちが、エンジン性能をモニタリングする。

ロールスロイスは機体の改造に7,000万ドル(約76億円)を投じている。これには新たに取り付けられる3万個の部品も含まれている。

ジェットエンジンのデータを大量収集

エアロテックがこれほどの大金を投じるのは、いくつかの大きな理由がある。ひとつには、現在ロールスロイスがアリゾナ州ツーソンで空飛ぶテスト環境として利用しているボーイング747-200機が、使用開始から約50年が経過していることだ。

交換部品を見つけることがますます難しくなっているのだと、同社の開発・実験的技術責任者のガレス・ヘディカーは言う。また、新しい747-400は、747-200と比べてより高く速く飛行できる。このためロールスロイスは、エンジンをこれまでより多様な状況でテストできるようになる。

機体に新しい計器を追加することで、さまざまな電気条件や水理条件のシミュレートが可能になる。これによってロールスロイスは、ジェットエンジンの動作に関するデータを大量に収集できるようになると、ヘディカーは言う。

エンブリーリドル航空大学で航空宇宙工学を教えるリチャード・アンダーソンによると、エンジンメーカーがテスト目的で空飛ぶ実験室をつくるのは珍しいという。ほとんどのメーカーは地上テストで、上空の低い空気密度と、時速600マイル(約960km)という速度を再現する。そのあと、高度な技術と米連邦航空局が認可した安全性プロセスを使用して、地上テストの結果が上空でも再現されることを確認する。

ロールスロイスの技術チームは、空飛ぶテスト環境をつくることで反復設計とテストプロセスをより迅速に進められるようになると、アンダーソンは言う。だが、地上でのテストより費用はかかる。747機を使うとなればなおさらだ。「テスト環境として使うには、非常に巨大で高価な飛行機です」とアンダーソンは言う。

鍵を握る「5番目」の小型エンジン

それでもロールスロイスがエンジン4基の大型飛行機を選んだのは、その多様な能力を利用するという意図がある。747機であれば、例えばエンジンのひとつを実験モデルで置き換えることもできる。747機はエンジン3基で飛行できるため、実験がうまくいかなくても飛行機が地表に向かって真っ逆さまに落ちる心配がない。

さらにロールスロイスは、エアロテックにちょっと変わったことも依頼している。それは燃料系統、電気機器、油圧装置の経路を変更し、センサーを追加して、5番目となる小型エンジンを747機の前部胴体に搭載できるようにするというものだ。

「これは簡単な試みではありません」とヘディカーは言うが、目的がある。ロールスロイスはビジネス機用のジェットエンジンも機上でテストできるようになるのだ(飛行中にほかのエンジンが停止されるわけではないが、テスト対象の小型エンジンの稼働状態がわかるように調整することは可能だ)。

最終的に747機は、テストパイロットがエンジンの能力を試せるよう、いつも晴れていて広大な空にアクセスできる場所に向かって飛び立つことになる。だがいまのところは、ワシントン州モーゼスレイクにあるエアロテックの施設に足止めされている。ここで、その臓器といえる部品(座席、電気配線、燃料経路)が2020年半ばから抜き取られ、交換される予定だ。

並行して設計も進行中

モーゼスレイクの地上チームは、こうして747機の旅客機としての役目を終わらせ、不要な機器の取り出しを始めている。その一方で、シアトルにいるエアロテックのエンジニアたちは、空飛ぶテスト環境の最終設計を完成させるための作業を進めている。

ジェット機サイズの“不死鳥”が最終形態に近づくときには、この機体に精通している人たち、つまり元のボーイング747-400機の設計に携わった航空宇宙専門家たちの手を借りることになると、ヒューマンは説明する。その生まれ変わりに携わる者として、これ以上ない適任者と言えるだろう。

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January 13, 2020 at 04:00PM
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