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2050年に答え合わせができたらいい:『映像研には手を出すな!』で大童澄瞳が描く未来|WIRED.jp - WIRED.jp

『月刊!スピリッツ』にて、2016年より連載がスタートした大童澄瞳の『映像研には手を出すな!』。2020年には湯浅政明監督によるテレビアニメ化に続き、乃木坂46のメンバーを主演に迎え実写化もされる。そんな話題作は、いかに誕生したのか? 自身のことや作品について、大童に訊いた。

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大童澄瞳|SUMITO OWARA
マンガ家。1993年生まれ、神奈川県出身。『映像研には手を出すな!』〈小学館〉が商業誌での連載デビュー作となる。TVアニメ版ではエンディングのアニメーションを手掛けた。

いざ、大童澄瞳の仕事場へ

2050年代が舞台の『映像研には手を出すな!』。物語の設定や登場するガジェット、キャラクターたちの軽妙なやりとりが魅力の本作について大童澄瞳に話を訊くべく、今回は大童の仕事場に潜入することになった。

「根掘り葉掘り聞いていいですよ」という大童の言葉に甘え、みっちり1時間半にわたるインタヴューを敢行。幼少期の制作の原点から制作技法、さらに大童が見据える2050年の未来の展望まで、話を訊いた。

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仕事部屋には、モデルガンやぬいぐるみがたくさんある。

──pixivで大童さんの過去の作品を見ていたら、2008年くらいの作品がありました。大童さんは中学生のころですよね。

そうですね。最近、改めて自分が描き始めた時期を調べたのですが、中学生くらいからでした。“絵を描く人”は、もう少し年齢が低いころからやっているイメージですよね。でもぼくの場合は小学校のころは落書き程度で、創作活動はしていませんでした。

──さまざまなマンガやアニメが家にある環境でしたか?

いえ、家にマンガはほとんどなくて、図書館に行って借りるくらいでした。ただ姉が幼少期から、ペンと紙を机に置いておくと勝手に静かに絵を描いているような人で。両親も絵を描く人ではあったんですけど、ぼくが日常的に家で絵を描くことはほぼゼロでした。

家にはテレビはあるけれど、アンテナと接続していなくて、ヴィデオだけを見るという。ヴィデオをレンタルして、アニメを見たり。だから同世代で流行っているアニメとかは見ていないんです。「ルパン三世」のファーストシリーズとか、「宇宙戦艦ヤマト」とか「未来少年コナン」とか。いわゆるオタク第一世代の好むものを、親に見せられていました。

───ネット環境が小さなころから身近にある世代ですよね。

そうですね。パソコンとネット環境はあったので、まあネットをやったり。

──当時のイラストを見ると、躍動感のあるイルカを描いていたりして、すでに“キャラクター”をつくるような描き方をしていました。

“躍動感のある絵”は、おそらく小さいころからほとんど無意識に描いていました。小学校入学前の落書きを見ると「魚が虫を食べる」シーンを描いていて、それは水面にバンッと跳ね上がって体をひねらせる魚の絵でした。だから、無意識だけれど「動きを捉える」という気持ちはあったのかなと思います。

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pixivに掲載されている中学時代のイルカの作品。

映像研と重なる青春時代

──中学時代から絵を描き続けているのですね。

中学でネット上で絵を書いて発表することを始めて、高校になると部活のポスターを請け負ったりして、ちょいちょい便利な人として活動していました。まあ、でも、ぼく、絵を描くのがそこまで好きなわけではないので。

──ええ!? そうなんですか。

はい、本当にそうです。中学で絵を描き始めたのも、ずっと学校に行っていなかったので「ぼくには特技がない」という気持ちが自分のなかにあったからでした。で、人に評価されることとはなんだろう、と考えたりして。

モテたいからギターをやることがあると思いますが、それにちょっと近い。人から認めてもらうために、勉強も運動もそこまでできないけど、わかりやすい特技として絵を描いたらどうだろうというところから始まっています。だから、そこまで絵を描くのが好きというのはなくて、1年にひとつ、力作をつくればいいほう。

──創作活動は継続されてきたのですよね。

創作活動が嫌いなわけではなくて、高校でもずっと続けていました。ただ、絵を描く上で「プロセスが好き」なのか、「最終的な成果物に満足する」のかは別のことだと思っていて、ぼくの場合は絵を描くプロセスにはあまり興味がない。だから高校時代には“仕事”としての絵の請け負いと、自分の“趣味”の絵と2通りあって。趣味の絵に関しては、年に1枚だけ年賀状用に描くみたいな。

専門学校では油絵を専攻して、ファインアートといいますか、アート全般をやっていたので、絵を描く枚数は格段に跳ね上がりました。

──アニメーションや映像をしっかりつくろうと思ったのはいつごろですか?

高校で映画部に所属していて、映像を撮り始めました。ポスターを請け負い始めた時期ですね。「プロって何だろう」と思い始めたのもこのころです。

先生は学生にポスターを頼んでいるし、部活としてただ映画を撮らせているだけで大して期待もしていなかったと思うのですが、そこで期待以上のものを出したらプロではないかなと思って。「期待された以上のものを描こう、つくろう」と。あとは自分で満足が出来るかどうか、みたいなところですね。

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仕事部屋に飾られた、専門学校の卒業制作。未完だそう。

──どんな映像を撮っていたのですか?

いろいろな映画を撮っていて、SFからホラー、ハードボイルドも。ロングのトレンチコートを着て、ハットをかぶって、で、シャツにネクタイ締めて、銃を持って。探偵モノみたいな映画も撮りました。

──映像はもちろん、脚本、コンテなど、全部やられていた?

そうですね。ほぼすべて経験しました。役者もやったし、脚本もコンテももちろん。撮影もやったし、監督も。途中から脚本が書ける人が加わったりして、プロデューサー的な立ち回りをしたり。そういう経験がすごく活きている気がしますね。

──まさに映像研の下地のような高校時代ですね。浅草みどりであり、水崎ツバメであり、金森さやかでもある。キャラクターにはやはり、ご自身の経験や性格的なところも投影されていますよね。

そうですね。まあ、完全にモデルがいないのは浅草氏。つまり、ぼく自身。でも、結局この3人は、ぼくの3分割なのかなとは思いますね。ただ、ぼくの自称としては「絵を描く金森氏」っていう(笑)

──プロデューサー的な視点があるクリエイターなわけですね。

そうですね。コミティアとかもそうですけど、自分で売っていくにはどうしたらいいかと考えます。自分のことについていろいろ考えるのは、結構、好きです。というか、ライフワークにしています。

Twitterでも、自分がいま何を言っているのか、自分がいまどういう立場にいるのか、それがどう評されているのかを常に考えています。同時に、この作品がどういうふうに読者に伝わるかも考えてたりして。やはり絵を描く金森氏の気質はあるかなと思いますね。

ただ4巻くらいになってくると、浅草氏が強く出てくる。「やりたいことをやりたいようにやる」という気持ちにもなっているし、アニメーションがものすごく好きなのは水崎氏だから、本当にちょうどハイブリッドですね。

単行本が売れるたびに増えていくというぬいぐるみたち。みんなかわいい。

──キャラクターは大童さんのハイブリッドですが、現実の自分をどう認識していますか。

ぼくは小心者で、人前に立つのがあまり得意ではなくて。でも自分の別の人格として、金森氏みたいなのもいる。あとは、ぬいぐるみとか可愛いものが好きだし、タヌキとか。どんどん増えていく(笑)

──確かに仕事場には小さいぬいぐるみがたくさんありますね。

ピンクのエイのぬいぐるみに、イカ、ナマズのぬいぐるみとか。木のクッションにネコのクッション。「かわいい」ものが好き。

──浅草氏も胸元にぬいぐるみを入れていましたね。

そうですね。まさに。

──映像研の原作は、浅草氏の設定画のページがやはり印象的でした。描き込みもすごい一方で、通常のシーンはすっきりとしていますよね。

画面の密度にはいろいろなスタイルがあると思いますが、ぼくの場合は「存在するものはなるべく全部描きたい」というタイプ。あとは実写やアニメーションだと背景が「白」という作品はあまりないですよね。だからレイアウトをして空間をつくるにあたり、カメラがどの場所に移動しても、背景もそのカメラの位置に従って正しく描画するようにしています。

──3人の立ち位置やカメラワークを考えるために、PCで3Dモデルをつくって確認しているのですか?

いや、ほとんど頭のなかです。もちろんすごく簡単にできるわけではなくて「こっちだからこうだ」と考えて描いています。実際に行った場所を描くのであれば速いですが、頭のなかにどれだけ3次元的な空間が組み立てられているかによりますね。

──つまり、配置が全部頭のなかに入っている?

そうですね。空間をあまりイメージせずに描き始めると、描いている途中で「カメラをこっち側に反転させたら、こっち側も考えなきゃいけない」と、どんどん描くスピードが落ちていく(笑)。だから、寝る前とか風呂場で「あ、なんかこういう場所もいいかもな」とぼんやり想像して、先に頭のなかで土台を組み立てておくとうまく進みます。

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整理された仕事部屋。モニターに映し出されているのはコミック2巻の「ガテン系ロボ」。マンガではモノクロだが、カラーで描いているのは「関節などの接続部分がわかりやすくなるように」とのこと。

──芝浜高校はエキセントリックなつくりですが、設定を考えるためにどんなことをされていますか?

ときどき東京大学のキャンパスに遊びに行ったりしているのですが、大学構内はいいなあとか。たまにそういうところで吸収しています。

──浅草氏のつくる設定だったり、作品のなかではリアルな世界だけでなく、彼女たちがつくった物語も登場します。ロボットのお話でも、矛盾がないように細かい設定をしていますよね。

描くジャンル次第ですが、それぞれのオタクの業界を調べることが大事かなと思っています。列車を描きましたが、モノレールは吊り下げ型なのか、レールの上からかぶさる型なのか、とか。電車やモノレール好きの人が何を求めていて、どういうところに面白さを感じるのかを先に調べています。

ぼくはロボット系オタクの人に比べれば、ロボットへの“好きの度合い”は低いと思うのですが、描く上で、どういうところが楽しみのポイントなのかは調べます。巨大な二足歩行ロボットでは、歩くと中に乗った人がものすごい揺れるというロボット論争があり、その解決手段も提示されていたりして。

それがロボットアニメーションの歴史でもあるんですよね。コックピット内は重力制御がされているから揺れないとか、重力制御はしていないけれど特殊な訓練をしているから大丈夫、というような設定を考えていたり。いろいろ調べつつ、メタ的に描くという感じです。あとはどこで譲歩するか、どこで妥協するか、ですね。

──もちろん作品はフィクションではあるのですが、大童さん自身はあまり「嘘」は描きたくないのかなと。

嘘を描く以上、リアリティが必要だなと思います。リアルな要素を大量に詰め込むことで、大きな嘘がつける。この考えが、背景や物語の設定によく作用しているとは思いますね。

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石黒正数『それでも町は廻っている』や、鶴田謙二『おもいでエマノン』、大友克洋や、高野文子のコミックも。この棚のほかにも「藤子・F・不二雄」棚があり、ほぼ全作品が揃っていた。ちなみにこの日の大童のメガネはドラえもんカラーだった。

──ちなみに、具体的にどんな作品に影響を受けてきましたか?

『ドラえもん』は大きいですね。本棚のほとんどは『ドラえもん』で、秘密道具の図解もいいです。メカなど、面白いものを考える点では『ドラえもん』。ただ、物語の構造や軽妙な会話は、もちろん藤子・F・不二雄作品にも軽妙な会話は多いですが、石黒正数先生の作品や、鶴田謙二先生の作品から影響を受けていると思いますね。

──なるほど!

もう最高です!

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主にタブレット端末で作業を進めている。

隠されているテクニック

──映像研には、新しい表現がたくさん詰まっているように思います。例えばセリフのフキダシにパースがかかっていることが特徴的です。

実は、これ(下の写真)がいちばん最初につくった同人誌で、このコマが初めて吹き出しにパースをつけたところです。例えば、パースがかかった背景のコマに真正面を向いた吹き出しをつくると、パースが隠れてしまう。コマには、廊下という情報がある。パッと見ではどの場面かわからないけれど、後ろに机を描くことでここが教室だとわかるわけです。

でもここに真正面を向いた吹き出しをつくってしまうと、絵が隠れてこの部屋が教室かどうかわからなくなってしまう。だから「じゃあ吹き出しにパースつけちゃえ!」と思ったんです。

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大童がコミティアで販売していた同人誌。

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「早くしろ 今日は 急ぐのだ」というセリフにパースがかかっている。

──フキダシが背景に溶け込んでいて、面白い効果を生み出していますよね。

日常の何でもない会話は、こういうふうにパースをつけて、空間になじませることで雰囲気も出る、と考えてやり始めるようになりました。

──例えば士郎正宗さんのように、コマの端っこに手書きでいろいろな設定を書く作家さんもいますが。

ぼくの場合、セリフは「吹き出しのなかに全部押し込んで完結させてしまえ!」という思いがあります。こういうジャンルのものはこういうジャンルとしてまとめる、という自分の“片付ける理屈”があり、だからなるべくセリフも「片付ける」というイメージが強いんです。セリフが多いと指摘されることもありますが、なるべく少なめにしています。

これは部屋の片付けに通じていて、「整っている状態」に対して自分が感じる気持ちにかなり近いです。

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何も置かない棚が好きだという大童。“決められたルール”は、現実世界の仕事場においても垣間見られる。

絵が動き出すこと

──アニメになり、実写化も控えていますね。特にアニメは大童さん自身、大きな反響を実感されているのではないでしょうか。

そうですね。いくつかありますが、アニメ2話が放送されたあと、朝起きたらフォロワーが20,000人増えていました(笑)。

──すごいですね。

ぼくはアニメーションをつくりたいと思ってたので、感慨深いです。監督の湯浅(政明)さんは、マンガを読んでアニメ化したいと思ってくれていたそうです。

──湯浅さんとはどのようなお話をされましたか?

湯浅さんからは、原作通りに行きたいと言われていました。だけど、ぼくとしては、まったく原作通りでなくても構わないと思っていて。とにかく湯浅監督の作品が見られること自体が素晴らしいし、湯浅監督以外にもたくさんのクリエイターがかかわってくれているので、その人たちの仕事を見られるんだったら、アニメに最適化したかたちにしてもらいたいと考えていました。

それでも原作の通りにやってくださることになって。そうなると、こっ恥ずかしさもあるというか(笑)。でも、そう思いながらも、やっぱりアニメになるとクオリティが増す。情報の密度や密集してる部分が違う。

例えば、マンガ文脈だと、会話などがあることが密度の高さになります。アニメーションだと、もっと動きなどの別のエネルギーを使うんです。また、会話にはひと言の面白さとキャッチボールの面白さがありますよね。アニメーションでは会話がキャッチボールになって、面白さがぎゅっと凝縮されて密度が高まる。表現の仕方が変わるのはすごぐいいなと思います。動くし、会話のキャッチボールも見られて最高だと思いました。

──そして実写版もあるわけですよね。

そうですね。実写は結構、騒ぎになるじゃないですか。ぼくも最初からわかっていたし、監督もプロデューサーさんも編集部の人も全員わかっているんですよ(笑)。アイドルグループだし。「実写化はクソ」という流行もあるし。

──なるほど。

原作を描いたぼくからすると、アニメだって全然別物。別のものとしての楽しさがある。マンガ原作だと、自分たちが求めているものではないという反発がどうしても実写のほうに向いてしまうんですけど、必ずしも原作やアニメーションを楽しんだ人たちだけのために実写がつくられるわけではないんですよね。

それに実写版は、実は原作のマンガとアニメ版と同じぐらいの差でできているんです。それぞれが同じぐらいの距離を保ってつくられているものなので、本当はそこを見てほしい。

原作者というと、「実写化もすごくいいよ」と告知するのはもはや当たり前。だから、原作者に対してどれぐらい信用があるのかが重要な問題です。懸念点としては、実物が「可愛いすぎる」ということがあります。

──浅草氏、金森氏は確かに心配ではあります。

キャラクターは、ヴィジュアルとパーソナリティで構成されています。だからどう演じるかの問題なんですよね。でも、浅草氏の顔は「ただの丸たぬき」というイメージだけれども、よくよく考えてみると、この顔も世間一般よりは少し可愛いくらいの整った顔で、デフォルメのひとつとして描かれています。でも作品内の文脈によって、「丸たぬき」と読み取ることができる。

そういう視覚情報とパーソナリティとのバランスでつくっているものなので、アイドルという“ヴィジュアルの可愛さ”が認められている存在とはいえ、パーソナリティが肉付けされたものになると、本当に違和感なくちょうどいい感じに出来上がるんです。

──アニメとしての表現と、実写としての表現。あるべき姿になっているわけですね。

そうですね、それぞれ本当に自由にやってもらいたいと思っています。

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ひとつひとつ、コマをみながら、丁寧に取材に応じてくれた。

未来を見据えた映像研

──映像研の舞台は2050年代ですが、“未来を描いている”点で、気をつけていることはありますか?

30年後に2050年が来ます。2000年代にはすでに『攻殻機動隊』はマンガとしてあったわけですけど、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』を観る限り、2030年代には世界大戦が起きて、人類の電脳化は進んでいるわけですよね。でも実際、これから10年後に人類の電脳化や全身擬態ができるかというと、まだ無理だと思うんです。

そのイメージで2050年代を描くことがすごく重要だと思っています。たいしてガジェットが進歩していない感じとか、でもスマホみたいなものが全部1枚のモニターでぐわっと曲がるタブレットになるような。スマホは、背面全部が画像センサーになっているから背面にカメラがついていないんです。虫の複眼みたいな感じで、細かいレンズになっていて、とか。

本当に人に気づかれないような、でも「2050年だったらワンチャンあるぞ!」みたいなのものを描いてみたり。人種が多様にもなっています。

──具体的なシーンはありますか?

例えば、食堂にハラルがあるという程度の描写ですけど、そういうことが普通になっている時代かなと。宗教上の理由で食べられない人は、調理場も分けないといけないんですよね。食堂の支払いは生徒手帳でピッと精算しています。

あとは、バリアフリーの考え方も変わってくると思いますね。この学校は大きい施設なので、2020年代くらいに食事の受け渡し口が腰より低い位置に下げられているんです。車椅子とかでも受け取れるっていう。

だけどおそらく2050年代になると、身体障害がある人も、立って歩行ができるようになったり、社会福祉のあり方も変わってきていたりするだろうなとも思いつつ。映像研の設備は、2030年代につくられた“古い”ものと考えています。

──食堂のバリアフリーは気づきませんでした。細かい設定で、読者も気づいていなそうですよね。

そう、たぶん気づかないでしょうね(笑)。2050年ごろに答え合わせができたらいいなと思っています。

電源タップみたいなものを部室に描きましたが、床暖房と同じレヴェルで非接触給電できればいいので、本当なら別に電源タップはいらないですよね。テーブルも中にワイヤーがピーっと通っているだけで、ものを置くだけで充電ができるとか。

電子レンジはさすがに電圧がやばいので、非接触給電できないとか。車は非接触型でも充電できるようになりつつありますけど、どうなるんだろう。あとは、紙の本が珍しくなっている。

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描かれた電源タップ、のようなもの。

──貴重本か、絵本か、という描写がありましたね。それを聞くと、われわれは雑誌『WIRED』もあるので苦しいです(笑)

結局、読むものやメディアはかたちを変えて残っていくわけですよね。

──マンガの表現は、今後どのようになっていくと思いますか?

電子媒体だと、縦スクロールのマンガがありますよね。それに合わせてコマ割が変わったり。なるようになっていくんじゃないかなと思います。何でもかんでも守ろうとしなくてもいいのかなと。

言葉もそうですけど、「最近の若者の言葉は使い方が間違っとる!」というのもおかしな話ですよね。大昔と比べて、かなり変わっているものですから。言葉と同じように、マンガも書き記されて残っていくものなので、表現はどんどん変化していっていいと思います。

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おなじみの浅草氏の帽子。

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March 08, 2020 at 04:00PM
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