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米国で自動運転シャトルバスに乗客の輸送停止命令、介入した当局の事情と関係者の困惑|WIRED.jp - WIRED.jp

米国の運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、自動運転シャトルバスに乗客輸送の停止を命じる措置に踏み切った。これまで自律走行のプロジェクトには干渉しないアプローチをとってきた当局の干渉は、関係者の困惑を招いている。

WIRED(US)

EasyMile

HYOUNG CHANG/MEDIANEWS GROUP/THE DENVER POST/GETTY IMAGES

米国の交通安全を担当する政府機関である運輸省道路交通安全局(NHTSA)が2月25日の午後(米国時間)、フランスのイージーマイル(EasyMile)が開発した自動運転シャトルバスに乗客輸送の停止を命じるという異例の措置に踏み切った。イージーマイルの自動運転シャトルバスは、米国の16都市で乗客を輸送しているか、輸送する準備に入っていた。NHTSAの命令によると、引き続きイージーマイルのシャトルバスの公道運用を許可しているが、人間の乗は禁じている。

この乗客輸送の一時停止は、2月24日にオハイオ州コロンバス市で起きた事故を受けたものだ。この事故は通りで運行していたシャトルバスが緊急停止したときに発生した。

事故当時、シャトルバスの走行速度はわずか時速7.1マイル(同約11.4km)だったが、突然のブレーキによって車内にいた女性が転倒した。この乗客は病院に運ばれたが、軽症だと伝えられている。

コロンバス市は、自律走行車を利用した1年間の実験で、イージーマイルの12人乗りシャトルバスを2台使用している。このシャトルバスはトースターに似た外観で、最高時速12マイル(同19.3km)で走行する。

当局は介入しないはずだったが…

今回のNHTSAの判断は困惑を招いた。なぜならNHTSAは、通常は自律走行車に対して干渉しないアプローチをとっているからだ。カリフォルニア州とアリゾナ州で自律走行車の試験が実施されているが、多くの衝突事故や災難、接触事故が発生してきた。結果的に数名の軽傷者を出し、アリゾナ州では女性が1人死亡している。しかし、車両の運用は州の監督下ということもあって、NHTSAは介入してこなかった。

自動運転ではないが、高速道路でいくつかの運転操作を実行できるテスラの半自動運転機能「オートパイロット」は、これまで米国全土で数件の死亡事故にかかわってきた。NHTSAは、オートパイロット関連の事故に対して14件の調査を開始したにもかかわらず、公道でのこのオートパイロット機能の使用を許可している。

NHTSAは2018年に、フランスの大手公共交通機関TransDevが運営し、イージーマイルのシャトルバスが参加したフロリダ州での実証プロジェクトを中止させている。NHTSAの主張によると、このときはさらに厳しい車両基準を満たす必要があるスクールバスとして、TransDevがシャトルバスを使用していたからだ。

「NHTSAはほかの事例にも自由に介入できます」と、NHTSAの元暫定局長で現在は『コンシューマー・レポート』誌の消費者擁護担当ヴァイスプレジデントを務めるデヴィッド・フリードマンは語る。「NHTSAは、これまで介入しないことを選択してきただけなのです」

憂慮すべき矛盾

ほとんどの自律走行車は、米国運輸省の設計基準を満たすため、運用の際に連邦政府の承認を必要としない。なお、GMクルーズの自律走行車は「シボレー・ボルト」に複数のセンサーを搭載しただけのクルマだが、ゼネラルモーターズ(GM)はNHTSAにステアリングなしでクルマを操作できるよう規制適用の免除を求めている。

NHTSAには、イージーマイルの事例に介入する明確な理由があったようだ。なぜならNHTSAは、イージーマイルとそのユーザーに対して、イージーマイルのシャトルバスを米国に輸入する特別許可を与えたからである。

だが一部の人々は、それではつじつまが合わないと主張する。「これは憂慮すべき矛盾です」と、『コンシューマー・レポート』のフリードマンは言う。「NHTSAは例外扱いではなく、規則に従ってイージーマイルに対応すべきです」

NHTSAの報道官は声明のなかで、「イージーマイルおよび地方自治体を含む関係当事者と引き続き協力し、適用される法的要件と公共の安全性に合致するように、潜在的な将来の車両運用を評価します」と述べている。なお、イージーマイルの車両がいつ道路に戻るか、または戻る見込みがあるのかについては説明されていない。

技術にリードさせる手法は間違っている?

NHTSAは、自動運転技術の開発と試験を進めている企業向けに、自発的協力を求めるガイダンスを作成している。そして自動運転技術の開発者に対し、安全への取り組みに関する情報を提出するように要望してきた。しかし、この提出は任意である。

企業から提出される書類は、試験への取り組みに関する明確な見解を提供する詳細な技術文書というよりも、ぴかぴかした感じのマーケティング用パンフレットに近いこともある。運輸省も議会からの確固たる指示を待っている。2年前に上院は自動運転の規制に関する取り組みに失敗しており、連邦議会で両院の議員は法案の成立に向けて取り組んでいるところだ。

独立した国家機関である国家運輸安全委員会(NTSB)は先日、NHTSAによる最新車両技術へのアプローチを批判している。NTSBは、カリフォルニア州のベイエリアで発生したテスラのオートパイロット関連の衝突死亡事故に関して2年間の調査を終え、テスラ、携帯電話メーカー、カリフォルニア州の高速道路管理当局、そして運転者の雇用主(アップル)とともに、連邦当局にも事件の責任があると主張した。

「NHTSAは技術にリードさせようという見解ですが、いろいろな意味で技術はNHTSAからの指導を待っていると思います」。NTSBの高速道路安全責任者であるロバート・モロイは、このように2月25日の会議で語っている。

米国の16都市で実証プロジェクト

イージーマイルのシャトルバスは、米国の16都市で実証プロジェクトに参加している。プロジェクトの多くは、大学、空港、交通機関などの組織によるもので、自律走行車が自分たちの輸送システムにどのように適合するかを探求している。

シャトルバスはゆっくりと走行し、困惑する乗客を誘導する人間の添乗員が必ずいる。このため利用者は、大きなリスクを感じずに最先端技術を体験できる仕組みだ。

例えば、1年間のパイロットプロジェクト「Smart Columbus」は、運輸省からの5,000万ドルの助成金の一部を使い、低所得世帯、特に母親がこの先端技術をどのように利用できるかを調べることが目的である。

このほかシャトルバスは、コロラド州ゴールデン市にある国立再生可能エネルギー研究所のキャンパス内で従業員の移動手段として、ダラス・フォートワース空港の駐車場とバスターミナルをつなぐ連絡バスとして利用されていた。テキサスサザン大学周辺では学生の移動手段として使われるが、当初6カ月の予定だったプロジェクトの期間が延長され、その一環としてイージーマイルのシャトルバスが使われた。

地元運輸当局は「安全性を確信」

イージーマイルのシャトルバスが関与した事故は、米国で少なくとももう1件発生している。7月に実証プロジェクトでユタ州各地を巡るシャトルバスが突然停止し、70代の男性が転倒して顔をけがしたのだ。

事故後、このシャトルバスを運行していたユタ州運輸省の報道官であるジョン・グリーソンは、「シャトルバスを検査し、安全性を確信しました」と語っている。この実証プロジェクトは5月まで継続する予定だったが、ユタ州運輸省はユタ州各地を巡るシャトルバスのツアーを短縮する可能性がある。

コロンバス市で運用されているイージーマイルのシャトルバスが緊急停止したのは、運用開始から3週間後のことだった。このシャトルバスの運用を監督するSmart Columbusの広報担当者は、「このシャトルバスの運用にあたってシャトルバスは非常に用心深くプログラムされています」と語っており、バス内には乗客に突然停止の可能性を警告する掲示もあったと説明する。

あらゆる自動運転技術は「誤検知」の問題に直面してきた。視覚・知覚システムが、ビニール袋や道路を横断するために待っている歩行者を、危険な道路状況と誤って判断して過剰反応を起こすからだ。

イージーマイル米国法人のシニアヴァイスプレジデントであるシャラド・アガルワルはコメントを出し、シャトルバスは突然停止するが「常に安全に」停止すると説明している。「当社の技術が進化し続けるなか、停止については外部環境と内部環境のバランスをとる必要があります」と、アガルワルは言う。イージーマイルの職員はコロンバス市で停止事故のデータを調査し、市内で乗客を乗せずにシャトルバスのループ運行試験を続けている。

公道でイージーマイルの低速シャトルバスを使用または試験している団体に問い合わせたところ、ほとんどの団体は、これまでイージーマイルのシャトルバスで問題が起こったことはないと語っている。

NTSBは、ラスヴェガスで17年11月に起きた別の自動運転シャトルバスの事故を調査している。フランスのメーカーであるNAVYA(ナヴィア)のシャトルバスに向かって、トラックがゆっくりとバックしてきて接触したのだ。この事故の当時、シャトルバスは停止していた。

NTSBは、事故の原因がトラック運転手の不注意と、皮肉なことに何か問題が発生した場合に手動でシャトルを運転する人間の乗務員の行動だったと判断を下している。事故が起きたのは、ラスヴェガスでのシャトルバス運行初日のことだった。

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