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「スカート男子」が変える社会とは? “性的志向”に紐付かないファッション(GQ JAPAN) - Yahoo!ニュース

ジェンダーレスからジェンダーフルイドへ─。「性的志向」に紐付かない性差を超えたファッションとは?そして、それがなしつつあることは? エッセイストで服飾史家の中野香織さんが考える。

【写真を見る】“メンズスカート”をチェック

ジェンダーフルイド(揺れ動くジェンダー)というトレンドが浮上したのは、2015年ではないかと思う。グッチのアーティスティック・ディレクターとしてアレッサンドロ・ミケーレが就任した年である。ショーでは、同じラインの服を、男女両方のモデルがごく自然に着ていた。男性服なのか女性服なのかはさほど大きな問題ではなく、気分次第で取り換え可能であると言わんばかりに。

それ以前の「ジェンダーレス」とどう違うのか? 20世紀を引きずるジェンダーレスは、男性なのか女性なのかわからない、中性的な、あるいは無性的な印象を与えるものだった。両性具有的な妖しい魅力もこのなかに含まれることがあった。後者の具体例としては、たとえばデヴィッド・ボウイを連想していただきたい。

2010年代半ばに登場するジェンダーフルイドは、そこからさらに一歩進み、男性としてふるまうか、女性としてふるまうか、あるいはそのどちらでもない性としてふるまうか、両性具有としてふるまうかは、時に応じて変わりうるという態度である。そもそもジェンダーに対して固執する発想そのものを古くさく見せる力が、ジェンダーフルイドにはある。

スカート男子

このようになるまでには、ジェンダーは「越境」されるべき壁としてとらえられていた。ジェンダーの「越境」に関しては、20世紀を通して、女性が男性服の要素を取り入れるチャレンジが主にメインテーマとしておこなわれてきた。女性服にタブーがほぼなくなった20世紀の終わりからは、男性が女性服の要素を取り入れることが社会的挑戦になっていった。ジャン=ポール・ゴルチエが1980年代に「男にはスカートをはく自由がある」と男性のスカートを提案したとき、ゴルチエは少数派だった。「スカート男子」はファッションニュースになった。

モード圏の外で男のスカートがニュースになったのは、ヨーロッパが酷暑に苦しんだ2017年の夏だった。イギリスのエクセターのある学校では半ズボン着用を禁じていたが、男子生徒の50人が、姉妹や女友達からボックスプリーツのスカートを借りて着用し、登校した。半ズボンではない、という意味でルールを破っているわけではなかった。外は30度超え。これは「ボックスプリーツの反乱」と呼ばれた。

この「反乱」を受けて、2018年春夏のメンズウェアは、多くのデザイナーが、すべてのジェンダーでスカートは享受されるべきというスタンスでメンズスカートを発表した。トム・ブラウンは、エクセターの学校のユニフォームと響き合うようなグレーのプリーツスカートを。エドワード・クラッチリー、ヴィヴィアン・ウエストウッドは、ことさら越境感なく、スカートやドレスを男に着せた。

この流れを流通業界も後押しした。百貨店セルフリッジズが「Agender」(「課題(agenda)」という意味と「ジェンダー超越」という意味をかけたことば)としてジェンダーを問わない買い物体験を提供した。服装をジェンダーで決めつける社会的拘束からの自由が、怒涛のように進んでいった。

2019年のアカデミー賞授賞式にはビリー・ポーターが巨大なスカートのタキシード・ドレスを着用し、好意的に受けとめられた。男のドレスすらもはやタブーではなくなる時代がすぐそこまで来ている。Z世代は抵抗がない。本誌2019年10月号で対談した17歳のYOSHIくんは「ウェディングドレス、かっこよく着てみたいんですよね」と屈託なく語っていた。

モード界におけるジェンダーフルイドは、性的志向とは切り離された表現ないし態度である。20世紀に存在した「ゲイらしい装い」の幻影も無意味となった。ゲイであろうが異性愛者であろうが、揺れ動くその日の気分に応じていかようにも装っていいのだ。その人らしいアイデンティティこそが大切であって、男性か女性かなど問うことすらばからしい。

そんなジェンダーフルイドの表現は、性的志向とは切り離されているゆえに、これまで差別と闘ってきたLGBTQにとって大きな救いとなった。LGBTQに対する社会の態度は、ミケーレ前、ミケーレ後で激変している。社会は寛容となり、世界各地で同性婚を表明するカップルが激増した。ジェンダーフルイドの表現が、社会の「多様性と包摂」を後押ししているのだ。モードが社会を変える力は、かくも大きい。

著者プロフィール/中野香織

服飾史家、昭和女子大学客員教授。ファッション史やモード事情に関する研究・執筆・講演を行うほか、企業のアドバイザーを務める。最新刊の『「イノベーター」で読むアパレル全史』(日本実業出版社)が絶賛発売中。

Words 中野香織 Photos Takuji Onda(Kaori Nakano) 、Getty Images、aflo

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May 09, 2020 at 07:40AM
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