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サイバーパンクの古典からディストピア作品まで、この夏に読むべき23のSF小説 - WIRED.jp

次に読むべきSF小説を探している人のために、『WIRED』UK版スタッフがお気に入りの作品を集めてみた。サイバーパンクにスペースオペラ、そしてディストピア──。不気味なほどリアルな話もあれば、想像力が暴走したようなものもある。どの作品も、わたしたちに起こりうる未来について、考えさせられるヴィジョンを示してくれる作品だ。

『三体』(劉慈欣 著、2008年、邦訳:早川書房)

劉慈欣が完全版の小説に取りかかる決心をしたとき、すでに中国で最も尊敬されるSF作家のひとりになっていた。彼の実力を存分に証明した『三体』は、文化大革命から現代へ、さらにミステリアスなヴィデオゲームへと、時代を飛び越えて世界が広がっていく。

「地球往事」三部作の第1作となる『三体』は、西洋のSF小説の表現からの魅力的な旅立ちであると同時に、単に楽しむだけでなく、何かを学ぶことができそうな現実の科学がたっぷり詰め込まれている。(Amazonでの購入はこちら

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『キンドレッド―きずなの招喚』(オクティヴィア・E・バトラー著、1979年、邦訳:山口書店)

オクティヴィア・E・バトラーの『キンドレッド―きずなの招喚』が出版されたのは40年以上前になるが、わたしたちすべてにとって、いまも役に立つ教えや学びが含まれている。主人公はアフリカ系米国人である作家のディナ。1979年のロサンジェルスから、南北戦争前の南部にタイムスリップしては、自分の先祖であり奴隷を所有する白人の窮地を繰り返し救うことになる。

彼女は現代における自分のアイデンティティを失わないよう努めながら、奴隷制度を生き抜くという恐ろしい現実に立ち向かわなければならない。ふとした弾みで、白人である夫とともにタイムスリップしたことにより、事態はさらに複雑になってしまう。権力、人種、不平等といった大きなテーマを掘り下げていくこの小説で、バトラーが描く現代の世界は容赦ない。1979年の現代と南北戦争前の時代を対比させることにより、複雑で屈辱的な奴隷制度の現実について、別の見方が示される。

『キンドレッド』を読む人は、奴隷制度の感情的なインパクトに引き込まれる。それは残念ながら、この問題についていま教えられていることのあまりにも多くにおいて、失われがちなものだ。

『新世界誌 光り輝く世界』(マーガレット・キャヴェンディッシュ著、1666年、邦訳:岩波書店)

英国の貴族マーガレット・キャヴェンディッシュが1666年に出版したこの小説は、初のSF小説と言ってもいいだろう。言葉遣いは時代遅れかもしれない。だが想像力に溢れ、恐れを知らないフェミニスト的なこの物語は、当時としては信じられないほど勇敢であるだけでなく、いまだにとてつもなくシャープだ。現代英国のファンタジー作家チャイナ・ミエヴィルやアラン・ムーアなどの作家たちにインスピレーションを与えたとされている。

キャヴェンディッシュによるこのユートピア物語は、人さらいに遭った女性の冒険を描いたものだ。彼女は別の世界にたどり着くのだが、そこを支配するのはキツネ人間やサカナ人間、ガチョウ人間など、一部が人間で一部が動物の生物たちである。この女性はとても美しかったことから、やがてこの世界の女帝となり、空から降らせる「火石(firestones)」などの武器を備えた軍隊を組織して、自分が最初にいた世界への強力な侵入に立ち向かう。(Amazonでの購入はこちら

『ジュラシック・パーク』(マイケル・クライトン著、1990年、邦訳:早川書房)

映画シリーズへと変化を遂げる前の小説『ジュラシック・パーク』は、同様に異彩を放つ『アンドロメダ病原体』の著者でもあるマイケル・クライトンによる軽妙で考え抜かれた心奪われるSFの古典だった。クライトンの物語は、遺伝子操作の危険に関する優れた寓話であり続けている(それと同時に、カオス理論のやや過激な探求でもある)。

恐竜の描写も素晴らしい。例えば、ティラノサウルス・レックス(Tレックス)については次のように書かれている。「ティムはぞっとした。だが、巨大な頭と顎から視線を落とし、その動物の身体の方に目を向けると、頭に比べて小さいが、筋肉が発達した前肢が見えた。それは、宙をさまよったかと思うとフェンスをがっちり掴んだ」(Amazonでの購入はこちら

『フランケンシュタイン』(メアリー・シェリー著、1818年、邦訳:新潮社など)

ゴシックスリラーの古典である『フランケンシュタイン』をメアリー・シェリーが書き始めたのは18歳のときだった。200年後のいま、生と死の本質や不死、遺伝子操作のような大きなテーマを扱うこの小説は、SFとホラーの両ジャンルにおける大切な祖先のような作品になっている。

科学を支持するこの小説の核心には、冷徹な悪人であるフランケンシュタイン博士が存在する。生物を創造するが、自分の行為に対する責任を受け入れようとしない人物だ。

生と死を隔てる空間がこれまでになく狭くなり、わたしたちを人間にしているものの本質を科学者たちがもて遊んでいる現代に、『フランケンシュタイン』は引き続き大切なことを教えてくれる。できるからという理由だけで、やるべきだということにはならないということを。(Amazonでの購入はこちら

『ファウンデーション―銀河帝国興亡史<1>』(アイザック・アシモフ著、1951年、邦訳:早川書房)

アイザック・アシモフは多作だが、人気のある作品の多くは「夜来たる」(同名の短編集に含まれている作品)や、「最後の質問」(短編集『停滞空間』に含まれる作品)のような古典的な短編小説である。長い冗談のような状況が長々と続き、最後に印象的なひねりが加えられるというものだ。

『ファウンデーション』シリーズでは完全に別の手法が使われ、帝国の興亡が勢いのある筆遣いで描かれている。アシモフの文章は堅苦しく感じられるかもしれないし、女性キャラクターの描写には当時の社会意識が現れている。それでも不朽のレガシーと言っていい作品だろう。

『ファウンデーション』シリーズは、「心理歴史学」の確立を目指す数学者ハリ・セルダンの物語だ。心理歴史学は数学の一部門で、数千年先のことを正確に予測できる。そしてセルダンは、人類を暗黒時代から救うためにこの学問が必要だと考えている。イーロン・マスクの愛読書のひとつというのもうなずけるだろう(彼の愛読書にはダグラス・アダムスの『銀河ヒッチハイクガイド』や、ロバート・A・ハインラインの『月は無慈悲な夜の女王』も含まれている。いずれもお薦めだ)。

長く映画化が待たれてきたが、アップルの新しいストリーミングサーヴィスの主要コンテンツのひとつとして提供される予定になっている。(Amazonでの購入はこちら

『虎よ、虎よ!』(アルフレッド・ベスター著、1956年、邦訳;早川書房)

この画期的な小説は、「人間がテレポートできたらどうなるか?」という単純な問いかけで始まり、太陽系を巻き込む再生と復讐の物語に発展する。宇宙時代の『モンテ・クリスト伯(巌窟王)』と言えるだろう。初版はウィリアム・ブレイクの詩にちなんだ『Tiger! Tiger!』のタイトルで英国で発表された(その後、タイトルは『The Stars My Destination(わが赴くは星の群)』に改称された)。

主人公のガリー・フォイルは暴力的で無学で非情な男であり、深宇宙で見捨てられて孤独な6カ月間を過ごす。物語の残りは、その復讐の試みで占められている。(Amazonでの購入はこちら

『ソラリス』(スタニスワフ・レム著、1961年、邦訳:早川書房および国書刊行会)

スティーヴン・ソダーバーグ監督による2002年の映画(アンドレイ・タルコフスキー監督による1972年の『惑星ソラリス』以来、2度目の映画化)で『ソラリス』を知っていると考えている人にとって、原書はちょっとした驚きになるかもしれない。

ポーランド人のスタニスワフ・レムが1961年に書いたこの小説は、プロットよりも哲学に重点を置いている。物語に登場するのは宇宙ステーションに勤務する研究員たちで、惑星ソラリスの謎に包まれた「生きている海」を理解しようとするが、うまくいかない。異質な惑星の活発な活動を長々と描写するが、その意味を解明することはできない。

調査すればするほど、最終的にソラリスが露呈するものは、ソラリスに関することよりも彼ら自身に関することのほうが多くなるのだ。この小説は、自分たちの世界のものではない何かを理解しようとする人間たちの虚しさを表している。(Amazonでの購入はこちら

『デューン 砂の惑星』(フランク・ハーバート著、1965年、邦訳:早川書房)

2012年に『WIRED』US版の読者は、史上最も優れたSF小説として『デューン』を選んだ。この小説シリーズは、史上最多販売数も達成し、広範な世界にインスピレーションを与えている。

このシリーズには34,000年に及ぶ設定に基づく18点の書籍や、デヴィッド・リンチ監督が手掛けて酷評を浴びた1984年の映画が含まれる(間違いなくリンチ監督による最悪の作品だ)。現在は、もっといいものになることが望まれるリメイク版の制作が、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のもとで進められている。

『デューン』シリーズは、未来の20,000年にわたる封建時代から抜け出せない銀河が舞台だ。コンピューターは宗教的な理由で禁止され、高貴な家柄の人々が惑星全体を支配している。物語の舞台となる惑星「アラキス」には、その希少価値と超能力を引き出す力から、宇宙全体で通貨として使われている材料がある。さらに、多数の巨大な砂虫(サンドワーム)もいる。(Amazonでの購入はこちら

『月は無慈悲な夜の女王』(ロバート・A・ハインライン著、1966年、邦訳:早川書房)

イーロン・マスクの愛読書とされているこの非常に引きつけられる作品は、人類が初めて月に降り立つ3年前に書かれているが、月での生活を臨場感たっぷりに描いている。流刑人やはみ出し者たちが住む植民地である月を舞台に、軌道上での生活が抱える課題や、問題を解決しようとする人間的な創意工夫が印象的に描かれている。(Amazonでの購入はこちら

『氷』(アンナ・カヴァン著、1967年)

アンナ・カヴァンの最後の(そして最高の)SF小説は、息苦しいような「世界の終わり」の忘れがたいヴィジョンを描いている。そこは巨大な氷棚が徐々に地球を飲み込み、あらゆるものを死滅させていく世界だ。

この物語の主人公であり語り手でもある男(名前はない)は、姿を消した掴みどころのない少女をひたすら追うが、氷が迫りくるにつれて少女に対する感情が敵意に満ち、凶暴化していくことに気づく。男はたびたび、少女の夫でもあり同時に捕獲者でもある「長官」を見かけるが、いつももう一歩というところで追いつけない。そして氷によって陸と海のほぼすべての道が閉ざされたとき、男の追跡劇は時間切れとなる。

この小説は、まるで『不思議の国のアリス』を大人向けの悪夢にしたような作品だ。カヴァンは読者を幻覚と不安に満ちた旅へと連れ出す。語り手が夢を見ているのか覚醒しているのかは関係ない。

だが、この本の真価はその言葉だ。依存や孤独、そして心の病で感じる苦痛が詰まったこの力強い寓話で、元気づけられることはまずないだろう。それでも引き付けられることは間違いない。(Amazonでの購入はこちら

『闇の左手』(アーシュラ・K・ル・グウィン著、1969年、邦訳:早川書房)

ル・グウィンはSFとファンタジーの世界を行き来しながら多くの作品を残した作家だが、この複雑な物語はファンタジーの古典的作品『影との戦い―ゲド戦記〈1〉』の翌年に出版されたものだ。

物語の舞台は、地球とよく似た辺境の惑星「冬」。この惑星は一年中寒く、住人は全員が同じ性別だ。両性具有を扱った初めての小説のひとつで、この異星人の文化を理解しようと奮闘する地球からの訪問者ゲンリー・アイの視点で語られる。(Amazonでの購入はこちら

『暗闇のスキャナー』(フィリップ・K・ディック著、1977年、邦訳:創元社と早川書房)

SFというよりも作者自身の薬物依存との闘いを題材にした、幻覚に満ちた自叙伝に思える興味深い小説だ。近未来のカリフォルニアで麻薬捜査官のボブ・アークターは、強力な向精神薬「物質D」が蔓延する薬物中毒者の社会で潜入捜査をしている。同僚の警官と会う際には特殊な「スクランブル・スーツ」を身に付けて顔と声を変える必要があり、自己意識が徐々に失われていく事態に対処せざるを得なくなる。(Amazonでの購入はこちら

『ニューロマンサー』(ウィリアム・ギブスン著、1984年、邦訳:早川書房)

サイバーパンク小説の決定版、ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』は、ハッカーからジャンキーへと身を落としたヘンリー・ケイスの物語だ。彼はサイバースペースへのアクセスを妨げている毒を抜くべく、最後に1回だけ怪しげな仕事をやり遂げようと奮闘する。日本のディストピア的な裏社会を舞台に、人工知能から人体冷凍術といったありとあらゆる未来技術が語られる。独創的な登場人物たちは、最後のページをめくったあともずっと記憶に残るだろう。(Amazonでの購入はこちら

関連記事ウィリアム・ギブスンのSFは、なぜ予想される未来ではなく「現在」を描きだしているのか

『Consider Phlebas』(イアン・M・バンクス著、1987年)

それまでに4冊の小説を発表して高評価を得ていた1987年、イアン・バンクスは初めてのSF小説『Consider Phlebas』を発表した。本格的なスペースオペラで、彼がのちに数多く手がけることになる「Culture」をテーマにした作品の第1弾だ。

Cultureとは星間ユートピア社会であり、ヒューマノイドやエイリアン、表面上は超高度な人工知能「Minds」によって運営される「意識をもつ機械」で構成されている。そこでは銀河全体を巻き込む戦争が激化している。一方は信仰のため、もう一方は存在の道徳的権利のために戦っているのだ。

バンクスはこの争いを、従来のファンタジー小説の「クエスト(探求)」に近いものと融合させている。それは破壊から逃れようとして禁断の世界に身を隠している、ならず者のMindを探すことだ。(Amazonでの購入はこちら

『ハイペリオン』(ダン・シモンズ著、1989年、邦訳:早川書房)

『ハイペリオン』は、1990年に長編小説部門でヒューゴー賞を受賞した重厚なSF大作だ。2作からなるシリーズの1作目で、『カンタベリー物語』の形式で物語が語られていく。

『ハイペリオン』の世界では人類は数百の惑星に広がっているが、辺境惑星ハイペリオンほど魅力的で危険な世界はない。ここには時間を逆行する神秘的な建造物「時間の墓標」があり、これらを恐ろしい存在「シュライク」が守っている。

時間の墓標に侵入しようとする者をすべて殺害するシュライクは、墓標への巡礼者たちを統制する狂信的な教団にインスピレーションを与えている。こうしたなか「時間の墓標」の謎を解明するため、男女7人の巡礼者たちが最後になりそうなシュライク巡礼のために召集された。そして侵入前夜、ここに至るまでの物語をそれぞれが語る。(Amazonでの購入はこちら

『スノウ・クラッシュ』(ニール・スティーヴンスン著、1992年、邦訳:早川書店)

熱狂的で面白く、不気味なまでに未来を予見している『スノウ・クラッシュ』は、最初のシーンから読者を引き付け、その後も読者を離さない。物語は無政府状態のロサンジェルスを走り抜ける高速レースから始まる。この世界の米国は、企業が所有する「バーブクレイヴ(郊外都市国家)」と呼ばれる小さな区画に切り分けられている。

主人公はエリートハッカーで剣士のヒロ・プロタゴニスト(「プロタゴニスト」は英語で「主人公」を意味する)。彼はカルト教団による危険なウイルスの拡散を阻止しようと奮闘している。神経言語学と古代神話とコンピューター科学を組み合わせた本書は、何とも不気味なことに、ソーシャル・ネットワークや暗号通貨、そして「Google Earth」の登場を予見している。(Amazonでの購入はこちら

『Metro2033』(ドミトリー・グルホフスキー著、2002年、邦訳:小学館)

核攻撃によって終末が訪れた2033年。生き延びたモスクワ市民たちは、街の下に迷路のように張り巡らされたトンネルへと逃げ込んでいる。それぞれの地下鉄駅に小国が生まれ、品物を取引したり、互いに争ったりしている。だが、駅と駅との間のトンネルには、人肉を食らう恐ろしいミュータントが潜んでおり、住人たちを狂気へと追い込む声が聞こえてくる。

これはドミトリー・グルホフスキーが大成功を収め、のちにヴィデオゲームのシリーズにもなった小説の設定だ。壮大な物語でありスリラーでもあるこの小説の主人公は、アルチョムという十代の少年。彼は生き残った人類を救うために、予想もつかない危険をくぐり抜けながら、モスクワ地下鉄の中心部へと向かわなければならない。衝撃的な展開が待ち受けている。(Amazonでの購入はこちら

『オリクスとクレイク』(マーガレット・アトウッド著、2003年、邦訳:早川書房)

アトウッドの別の作品『侍女の物語』は、日ごとに現実味を帯びていくように思われる全体主義的な世界を描いている。これに対して『オリクスとクレイク』では、最近その過熱ぶりが極限に達している遺伝子組み換えの世界を描いている。ある評論家はこの状況を表現して、「遺伝子操作による終末」と述べた。

すでに中止となっている米国の映画監督・脚本家ダーレン・アロノフスキーが手がける予定だったHBOのプロジェクトをはじめとして多数のテレビドラマ化が検討されてきたが、この作品も「映画化できない作品」リストでアルフレッド・ベスターの『虎よ、虎よ!』の横に並ぶことになるかもしれない。この本の世界は、それだけ力強く非現実的で、物議を醸すものなのだ。(Amazonでの購入はこちら

『The Heart Goes Last』(マーガレット・アトウッド著、2015年)

さまざまな小説の要素が詰め込まれた奇妙な作品だ。テクノディストピアの要素もあれば、風刺やセックス・コメディーの要素もあるし、いかにもアトウッドという要素もある。

舞台は「堕罪」後のような荒凉とした米国。若いカップルのチャーメインとスタンは、クルマの中で眠り、犯罪者からの攻撃から逃げ回るというみじめな暮らしに耐えている。そこに「Positron」プロジェクトへの参加の誘いと称する救済の手が差し伸べられる。1950年代の米国の郊外をモデルにしたゲーテッド・コミュニティに住めるというのだ。

しかし、問題がある。Positronのカップルは1カ月おきに刑務所に入り、一時的に「交代要員」と呼ばれるほかのカップルと家庭を交換しなければならないのだ。チャーメインとスタンの両方が、それぞれの交代要員と奇妙な性的関係を進展させるようになると、事態は悪いほうへと急展開する。(Amazonでの購入はこちら

『火星の人』(アンディ・ウィアー著、2015年、邦訳:早川書房)

アンディ・ウィアーのデビュー小説は文字通り、科学(サイエンス)をサイエンス・フィクションに変えている。火星での生活に関するしっかりと調査された詳細な情報が大量に詰め込まれているのだ。自分の排泄物を肥料にしてジャガイモを育てる方法や、火星探査機の生命維持装置をハッキングする方法が説明されているが、その詳しさはマット・デイモンが主演した映画版(『オデッセイ』)では描ききれないレヴェルだ。

粋でポップカルチャー感が満載の文体は、万人受けするものではないだろうし、おそらく英文学の授業の教材に使われることもないだろう。だが、一人称の視点は、地球に戻る手立てなく火星に取り残された宇宙飛行士の物語にぴったりだ。(Amazonでの購入はこちら

『パワー』(ナオミ・オルダーマン著、2016年、邦訳:河出書房新社)

この非常に面白い小説には、マーガレット・アトウッドも関係している。というのも、『侍女の物語』の設定を逆にし、女性が支配的な立場になっているからだ。

作者のナオミ・オルダーマンがアトウッドから助言を得ながら書いたこの作品は、女性や少女たちが手から電気を放出するという強力な能力を発見し、結果として文明が大きく変化するという話だ。『パワー』はテレビシリーズのようなペースで物語が進行する。権利獲得のための熾烈なオークションが終われば、すぐに映画化される予定だ。(Amazonでの購入はこちら

『Borne』(ジェフ・ヴァンダミア著、2017年)

「サザーン・リーチ」シリーズは超現実を描くジェフ・ヴァンダミアの才能を見せつけたが、『Borne』のヴァンダミアはさらにその上を行っている。

関連記事主役は人を“吸収”する植物モンスター:「サザーン・リーチ」3部作の作家が放つディストピアSF小説の魅力

物語は終末後の街で、空飛ぶ巨大熊の毛皮から目標物をむしり取る無名の掃除人で始まる。主人公が知能をもつイソギンチャクのような生物「Borne」と友達になると、物語はとにかく奇妙な方向へと進んでいく。最後に明らかになることだが、この物語はバイオテクノロジーが暴走する話であり、これ以上のものには出合えないというほど変化に富んだディストピアをつくり出している。(Amazonでの購入はこちら

※『WIRED』によるSFの関連記事はこちら。ブックガイドの記事はこちら

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