[シンガポール/アムステルダム 1日 ロイター] - 資産運用担当者の話では、従来は慎重だった欧州の一部投資家が、欧州の低金利にしびれを切らせ、アジアの債券市場への投資に動いている。高いリターンに加え、景気回復によって債務不履行は抑えられるとの期待に引きつけられている。
アジア各国の中央銀行は欧米の中銀とは異なり、社債相場を下支えする措置には踏み込んでいない。そのため、アジアの債券市場の回復は世界の他地域よりも遅れていた。
UBSアセット・マネジメントのアジア太平洋地区フィックストインカム部門を率いるハイデン・ブリスコー氏は「今や人々は、バリュエーションの差が縮小すると期待している」と語った。
同氏は、イタリアやドイツ、スイス、英国からの資金流入がここ数カ月で拡大したと指摘。「これが減速するとは思わない。1日として資金が出て行った日はなかった。流入が続いている」と話す。
アジアでも他地域と同様、3月以降はジャンク債のスプレッドが急速に縮小した。
それでもアジアの高利回り債は、安全資産としての幾つかのベンチマークに比べて利回りが686ベーシスポイント(bp)前後高い水準。欧州や米国のジャンク債よりも、少なくとも200bpは高くなっている。
同時にアジア経済、特に2600億ドル規模のアジアの高利回り債市場で圧倒的なシェアを握る中国の経済は、新型コロナウイルス危機からより改善された状態で浮揚しつつある。
ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントは、今年に成長する地域はアジアのみと予想している。同社によると、アジアのジャンク債の債務不履行率は今年、4%と見込まれ、米国の8%を下回る見通しだ。
HSBCグローバル・アセット・マネジメントのアジア太平洋地区クレジット調査部門を率いるエリザベス・アレン氏は「十分な利回りが確保され、必ずしもリスクが一段と高いわけではない市場があれば、少なくとも人々が注目する必要のある市場になる」と指摘。「単に『これはアジアだ。アジアについては分からないので、気にも留めない』という姿勢は急速に変わりつつある」と述べた。
<最高の満足度>
JPモルガン・アセット・マネジメントやピクテ・ウェルス・マネジメント、クレディ・スイスといった投資助言会社も、アジアの債券市場を有望視している。
ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントもロイターに対し、UBSアセット・マネジメントのブリスコー氏やHSBCグローバル・アセット・マネジメントのアレン氏と同様の口調で、このところ欧州からの需要に気付いたと話した。
投資家の話では、経済的要因のほかに、アジア債券市場の構成も魅力的な要因となっている。エネルギーや旅行、他の景気循環銘柄など新型コロナによって最も強く打撃を受けた業種が占める比率が欧米よりも低く抑えられているためだ。
オランダの資産運用会社レベコのシニア・クレジット・アナリスト、Tiansi Wang氏は「圧倒的なシェアを握っているのは、中国の不動産会社だ」と指摘。資本が十分に強化された中国の不動産業者は、好調な国内要因が追い風になっていると説明した。
さらに「それによってアジアの高利回り債市場の大部分は、世界の高利回り債との相関関係が低く抑えられている」と話した。
アジアには確かに、リスクの高い企業が依然として多数存在している。JPモルガン・アセット・マネジメントによると、アジアの債券全体に対する欧米からの投資の割合はわずか約16%だ。
だが先週のテンセント・ミュージックTME.Nによる8億ドルの起債は13倍近い応募超過となり、全体の約3分の2を欧州・中東・アフリカ(EMEA)および米国の投資家が落札した。こうした最近の起債案件への関心からは、少なくとも海外勢が受け入れる姿勢を強めていることがうかがえる。
JPモルガン・アセット・マネジメントのアジア地区債券責任者、ショー・ヤン・ホー氏は「この地域のプラスの成長軌道、強い追い風となっている政策、世界的な利回り追求姿勢がアジアのドル建てクレジットへの需要を維持し続けると当社は予想している」と話した。
(Tom Westbrook記者、Yoruk BahceliDavid記者)
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September 05, 2020 at 06:12AM
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