[ニューヨーク 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ラテンアメリカが同時発生した3つの危機に直面している。この地域が過去1世紀のあいだに直面したなかでも最も深刻な脅威だ。三重の課題を克服して安定回復へ改革を推進していくには、遠大な政治的ビジョンとリーダーシップが必要になるだろう。
第1の課題は、同地域を呑み込んでいるCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の広がりだ。犠牲者も多く、医療システムには前代未聞の負荷がかかり、緊急支援を効果的に提供する各国政府の能力が試されている。
第2は、コロナ禍が域内諸国に与えた経済面での悪影響だ。国際通貨基金と世界銀行の最近の予測によれば、世界の新興市場国のうち、パンデミック(世界的な大流行)による最大の影響を受けるのはラテンアメリカ及びカリブ海沿岸諸国とされている。
第3の課題は、ベネズエラ難民問題である。忘れられがちだが、これはラテンアメリカ地域における史上最大の移民問題であり、約500万人、つまりベネズエラの全人口の6分の1が渦中にある。
<深刻なコロナ禍と経済悪化>
6月初め以降、ラテンアメリカ地域はグローバルなパンデミックの中心地になっており、フィナンシャル・タイムズ紙による最近の報道によれば、世界の総人口に占める比率は8%にすぎないのに、COVID-19による死者の40%以上はこの地域で生じている。公衆衛生上の危機は、そのままGDPの歴史的な低下をもたらしつつある。
バンクオブアメリカのエコノミストによる最近の試算では、2020年のラテンアメリカ経済は8.2%のマイナス成長になると見られ、中東、アフリカ、アジア新興市場諸国よりも悪い。IMFと世銀による以前の予測では、約10%近いマイナス成長とさらに大きな後退が示唆されていた。
同地域の2大経済であるブラジルとメキシコは特に厳しい打撃を受けている可能性があり、大恐慌以降で最悪の景気後退に苦しんでいる。ブラジルはつい最近リセッションから回復したばかりだが、最新の予測では、5ー7%のマイナス成長となっている。メキシコの中央銀行であるメキシコ銀行は先日、今年のGDPが8.8ー12%のマイナス成長になるとの予測を示した。
ラテンアメリカ第3位の経済規模であるアルゼンチンは、新型コロナ拡大以前から厳しいリセッションに見舞われており、史上9回目の債務不履行を経て、現在は大規模なソブリン債再編を進めている。シティグループによる最近の試算では、今年のGDPは11.5%のマイナス成長になると見られる。
ペルーはこの10年間、ラテンアメリカでは最も高い成長率を見せており、世界の新興市場諸国のなかでもトップクラスの好調ぶりだったが、やはりパンデミックで大きな打撃を受けている。ジョンズホプキンス大学によれば、COVID-19による人口あたりの死者数でペルーはベルギーに次いで世界で第2位。その結果、ペルーは経済のマイナス成長という点で世界最悪の部類に入っており、第2四半期にはマイナス30.2%を記録している。こうした状況もあって、また新たに深刻な政治危機が生じようとしている。
それ以外のアンデス地域の主要国としてはコロンビア、チリがあり、いずれも苦境に陥っているものの、IMFによる最新の予測では約7%のマイナス成長と比較的小幅の後退に留まっている。コロンビアは、受け入れているベネズエラ難民が約150万人と最も多く、これも同国にとって特別な重荷となっている。
<災い転じて福となすチャンスも>
どこよりも深刻な打撃を被っているのは、そのベネズエラだ。COVID-19の襲来以前、そして今年に入ってからのグローバルな石油価格の急落以前から、ベネズエラは政治的・経済的混乱に陥っていた。ニコラス・マデュロ大統領の抑圧的な経済・政治運営のもとでは、ベネズエラの今年のGDPが30%近く減少しても不思議はない。またベネズエラは、世界でも最高レベルのインフレ率にも苦しんでおり、通貨ボリバルの価値は暴落している。
こうした悲惨なGDP減少を目にして思い出しておきたいのは、ラテンアメリカ地域について、米州開発銀行のルイス・アルベルト・モレノ総裁が10年前に「2010年代はラテンアメリカ・カリブ海沿岸諸国の時代になるだろう」と予言したことだ。
今回のラテンアメリカ全域にわたる三重の危機は、1つのチャンスになるかもしれない。その圧倒的な影響によって、深く染みついた構造的な問題が露呈されつつある。これらの問題には、教育、医療サービス、法の支配の実現という、長年の懸案であった広範囲の改革によって対処しなければならない。また制度構築ももっと重視しなければならない。さらに貿易分野については、メルコスールと太平洋同盟という2つの貿易協定を結合し、世界で最も重要な通商ブロックの1つを生み出すことを真剣に考慮する必要がある。
以上のような包括的な改革が行われれば、ラテンアメリカ再生の道は開けると筆者は考えている。
災い転じて福となる場合がある。いま経験している恐ろしい災難が、新たな安定と持続的な経済成長の時代に向けた土台作りになるならば、ラテンアメリカにとって、まさにピンチがチャンスになるだろう。
かなりの部分は、力強い政治的リーダーシップによって、各国政府がこうした必要不可欠な改革を実施できるかどうかに掛かっている。政治的に失敗すれば、ラテンアメリカはさらなる「失われた10年」に苦しむことになろう。
(筆者ウィリアム・ローズは元シティバンク会長。現在はウィリアム・R・ローズ・グローバルアドバイザーズ代表。1980年代・1990年代には、ラテンアメリカ・韓国の債務再編合意の交渉に臨んだ国際銀行団の諮問委員会を率いた。)
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(翻訳:エァクレーレン)
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October 03, 2020 at 05:53AM
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