Googleがコマース領域にじりじりと進出してきている。
Googleは長年にわたり、AmazonやFacebookのように、広告費を実際の販売に結びつけられるような機能を展開してきた。これまで重視されてきたのは、どちらかというと売上──そしてショッピング──に焦点を当てた広告と、検索結果を改編してオーガニックな検索結果を目立たせないようにすることだった。だが、その間にもGoogleは、GoogleフライトやGoogleショッピングといった、ユーザーがもっともお得な商品を見つけられるようにする、新しいプログラムを立ち上げてきている。
Googleがオンラインショッピング領域で自らをどのように位置付けようとしているのか、そして、その動きが小売業界にどのような影響を及ぼすのかを分析していこう。
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Googleショッピング
マーチャントやブランドサイドに関していえば、2014年以来Googleは、独立したショッピングプラットフォームを拡大してきている。かつてGoogleエクスプレス(Google Express:米国のみのサービス)だったものが、今年になってGoogleショッピングと名前を変え、人々が物を購入する際に商品を発見するプラットフォームになろうとしている。参加ベンダーには、比較的小さなアパレルブランドだけではなく、ウォルマート(Walmart)、ベスト・バイ(Best Buy)、ナイキ(Nike)といった大きなブランドも名を連ねる。
Googleショッピングは、検索結果に表示される広告と比較すると、かなりビジュアルの要素が大きく、おなじみのGoogle検索結果のページというよりも、Amazonのホームページのようにも見えるのが特徴だ。また、さまざまな方法で商品を絞り込めるようになっている。トンブラス・グループ(The Tombras Group)でインテグレーテッドサーチ担当シニアバイスプレジデントを務めるライアン・エドワーズ氏は10月、米DIGIDAYの兄弟メディアであるモダン・リテール(Modern Retail)の取材に対し、大規模なプラットフォームはどこも「ある商品を買おうと決めるまでに人々が行う検索」をめぐって争っているのだ、と語っている。
ブランドがGoogleショッピングのようなプラットフォームに参加することを選ぶのは、売上を伸ばしてAmazonへの依存度を下げる方法を探しているからだと考えられる。しかし、ピュブリシス(Publicis)のチーフコマースストラテジーオフィサー、ジェイソン・ゴールドバーグ氏は、それは「悪魔と取引しているようなものだ」という。Googleのプラットフォームを介して製品を販売する企業は、顧客データを手に入れることができない。
新しいタイプの広告
Googleは、ほかの方法でもコマースを促進してきており、そしてそれはGoogle自体だけでなく、他のサービスにも及んでいる。今年Googleは、Google画像検索やYouTubeでショッパブル広告のテスト導入を開始した。大きな画像と「今すぐ購入する(buy now)」ボタンを備えた広告だ。
ビジュアルコマースプラットフォームのキュラレート(Curalate)で最高経営責任者を務めるアプ・グプタ氏は昨年5月、モダン・リテールに、こうした新しい広告は「これまで広告主にとってアクセスするのが難しかったGoogleの一角に、広告が出せるように設計されている」と述べた。つまり、広告主の製品をより見つけてもらいやすくすることを意図した広告になっているのである。
Google検索の変化とコマース統合
Googleが商取引に食い込む方法は他にもまだある。そのひとつが映画のチケットだ。ユーザーが検索機能を使って、観たい映画の時間をオンラインで見つけると、そのままGoogleページでチケットを購入できるオプションが表示される場合がある。「Googleはリーガル・シネマズ(Regal Cinemas)のコマース体験をリバースエンジニアリングし、ショッピング体験の改善方法を見つけ出している」と、ピュブリシス(Publicis)のチーフコマースストラテジーオフィサー、ジェイソン・ゴールドバーグ氏は語った。
Whoa! Take a gander at @Google's future of the internet with this flow for buying movie tickets.
Google opens the site in background, presents their own UI, then acts on your behalf on the underlying site.
Very similar to their Duplex call bots, but for the internet. pic.twitter.com/4CSvroBoq0
— Paul Katsen (@pavtalk) December 16, 2019
Paul Katsen
@pavtalkすごい! 映画チケットの購入フローに@Googleによるインターネットの未来を垣間見た。
Googleはバックグラウンドでサイトを開き、独自のUIを提示してから、元サイトでユーザーの代わりにチケットを購入している。
電話予約代行ボットのGoogleデュプレックス(Google Duplex)と同じような仕組みだけど、こっちはインターネット用だ。
こうした取り組みはすべて、検索結果の上位に適切なコンテンツを強調表示し、Googleというプラットフォームから離れさせないようにするという大きな変更の一環だ。ショッパブル広告もこの動きの一端を担っているが、これが目立つように掲出されているのと同じページには、Googleがほかのウェブサイトからスクレイピングしてきたコンテンツも検索結果の一番上に表示されている。そのため、多くの企業がSEO戦略を見直すことになった。そして、アイクロッシング(iCrossing)の最高メディア責任者、クリス・アポストル氏が8月にモダン・リテールに語ったとおり、小売業者は「購入につながるクリックを必ずしも獲得しなくてもいい」検索キャンペーンを実施できるようになっている。
大企業はGoogle検索の変化がもたらす影響を認識しはじめている。たとえばエクスペディア(Expedia)では、お得な旅行プランを見つけようとする人たちのトラフィックを獲得するのに、これまで長いあいだ、各種検索エンジンに頼ってきていた。それが最新の決算報告では、財務のほぼあらゆる面で目標を達成できずに終わってしまっている。そして経営陣らは、この業績不振はSEOに逆風が吹いたからだとした。先日退任した元CEOのマーク・オカストローム氏は決算報告で「SEO効率が徐々に悪化し、それに伴い、よりコストのかさむマーケティングチャネルに頼らざるを得なくなった」と発言している。同じく退任した元CFOのアラン・ピケリル氏は「SEO順位がページ下部に下がってしまい、いままでそのリンクを介して取引していた人たちが、有料リンクを使うようになった」と語った。
エクスペディアは、Googleのアルゴリズムの後押しを受けて成功を収めてきた大企業だが、他の企業も同じような運命をたどる可能性がある。主にGoogle検索の結果を利用してトラフィックを増やしてきたブランドは、その安定した流れにはもう頼れなくなっているのだ。同様に、さまざまな企業が提供するプランをアグリゲートしている比較サイトも、同じような検索機能を備えたGoogleフライトやGoogleホテルなどの登場で需要が低下している。かつてのGoogleの力を借りて成長してきたこうしたブランドに、Googleがどんどん取って代わっていると言えるだろう。
前出のゴールドバーグ氏はこう語っている。「もともとの検索結果は、エクスペディアのサイトに誘導するものだった」。それが次に、Googleがいくつか新しい機能を追加し、検索結果の一番上でもっともお得な価格が強調表示されるようになったが、この段階でも最終的にはエクスペディアなどのサービスにリンクされていた。そしてその後、Googleフライトなどが導入される。旅行に必要な情報がしっかり集約されていて検索しやすいだけでなく、Google独自のコマース要素も盛り込まれている。「いま、ユーザーはそのチケットを、エクスペディアではなくGoogleから購入しているのだ」と、同氏は述べた。
いまのところ、Googleの動きは静かで慎重だ。焦点は、広告予算と消費者の財布との橋渡しに当てられている。ブランドには協力的な態度を見せるのと同時に、ブランドのサイトにはトラフィックを送らない設計になっている機能も構築している。ただ、Googleと調子を合わせて付き合っていると、危険な状況に陥る企業も出てくるだろう。「イーベイ(eBay)は、エクスペディアに起こったことが自分たちにも起こるのではないかと懸念しているだろう」と、ゴールドバーク氏はいう。「非常に難しいトレードオフだ」。
Cale Guthrie Weissman (原文 / 訳:ガリレオ)
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December 27, 2019 at 09:50AM
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