韓国やカナダなど海外のほか、日本でもかつて開発した新型転換炉「ふげん」で実用化したケースはありますが、いずれも少量で、濃度も福島で求められるレベルよりもはるかに濃いものでした。
このため経済産業省は平成26年から平成28年にかけて国内外の事業者を募って実証実験を行いました。
このうち、ロシアの会社は、▼沸点のわずかな差を利用する技術と、▼化学反応を利用する技術を組み合わせた実規模の施設を建設して検証しました。
施設は、高さが43メートルあまりある蒸留塔や化学反応でトリチウムを取り除く装置など大がかりなもので、試験の結果取れたデータの一部は国の基準よりも濃度が薄くなったということです。
しかし、試験期間が短く、データの取得が十分ではないなどとして技術としてはすぐには適用できないという結論となりました。
またこうした最新の技術でも完全分離はできず、一部、トリチウムが残ってしまうといいます。
さらに分離を行うことで取り除かれたトリチウムが集まって高濃度になるのでその扱いをどうするかといった新たな課題も発生してしまうということです。
山西博士は、「福島で実用化するにはいま開発されているものから3桁以上の多い量を処理できる装置が必要で、実用化は相当遠い。また、分離技術ができれば全て解決するわけではなく、濃くなったものを管理するリスクも含め議論しなければならない」と話し、すぐに実用化できる技術ではなく検討の選択肢に入っていないことはやむを得ないとしています。
ただし、山西博士は将来の技術の1つとして研究を継続することは必要だと話します。
近畿大学では、トリチウムを吸着させて取り除く技術の開発に取り組んでいます。
複数の小さな穴があいた「多孔質体」と呼ばれる物質の中に、トリチウムを含んだ水蒸気を通すことで取り除くことを目指していて、現在、実験室レベルですが半分程度取り除くことは見通しがついたといいます。
大学では将来さらに除去できる割合を向上させたいとしています。
リーダーの近畿大学原子力研究所の山西弘城教授は「トリチウムの処理水をただ薄めて放出するということであれば、地元の理解は得られないと思う。他にも処理する方法を探りながら、納得できるような形が必要で、その中の選択肢の1つにできればと開発を進めています」と開発の意味合いを語りました。
ただ、今後も開発を続けるには設備をより大型化して性能などを検証する必要があるとして、「施設や実験にかかる費用をどう調達するかが課題です」と話していました。
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December 23, 2019 at 04:13PM
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トリチウムとは? なぜ「海か大気中に放出」なのか? - NHK NEWS WEB
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