音としては聞こえるのに、話の内容がうまく聞き取れない「聴覚情報処理障害」＝ＡＰＤと呼ばれる症状があります。専門家が過去14年間に診察した患者を分析したところ、「耳だけで指示を理解するのが難しい」という患者が半数以上で、仕事のミスが相次いで受診するケースが増えていることが分かりました。
長年研究にあたっている国際医療福祉大学の小渕千絵准教授は、過去14年余りの間に大学のクリニックの専門外来を受診した、およそ120人の主な症状を分析しました。
その結果、「耳だけで指示を理解するのが難しい」と答えた人は52％と、全体の半数以上に上りました。
また、会議などで「複数の人との会話が難しい」という人も10.5％に上りました。
小渕准教授は「症状があっても気付かず、仕事にミスが相次いだり、人間関係に影響が出たりして自覚する人が多い。症状を感じたらきちんと評価してもらえる医療機関に早めに受診し、対応を相談してほしい」と話しています。
電話の内容が聞き取れない…
また、勤めていた建設会社では得意先からの電話の内容が聞き取れず、何回も聞き返したり時には、上司に用件を取り次げなかったりするなどミスが相次ぎました。
会社を退職し、今は電話対応のある仕事を避け、障害のある人の支援にあたっています。
石田さんは「聴覚情報処理障害という症状を最近まで知らず、仕事にも支障が出て、ずっと悩んできました」と話していました。
当事者会で活動も
中には「以前スーパーで働いていたが、指示が聞き取れず、退職せざるをえなくなった」と話す、33歳の男性もいて、症状が仕事に大きく影響している状況がうかがえました。
国際医療福祉大学の小渕准教授を講師に招いた勉強会もあり、症状を測定する最新の質問用紙が配られました。
参加した石田智郎さん（35）は検査の結果、80点で聴覚情報処理障害の可能性が高いとされ、聞き返すのをためらったり気が重いと感じたりするなど、心理的な負担が聞き取りに大きな影響を与えていたことも分かりました。
小渕准教授は症状は個人差が大きく、専門の医療機関を受診して一人一人に適したアドバイスを受けてほしいと話していて、▽相手にマイクをつけてもらい、自分の耳に装着した受信機で聞き取る方法や、▽ラジオや朗読のＣＤを使って聞き取る訓練、▽カウンセリングを受けて心理的な負担を減らし、症状を改善を図る方法が紹介されました。
また職場の人たちに症状を理解してもらい、はっきりと、ゆっくり話してもらうなど、環境を整えることも大切だと話していました。
診察・検査が可能な医療機関
▽国際医療福祉大学クリニック言語聴覚センター（栃木県大田原市）
▽東北大学病院（仙台市）
▽東京都済生会中央病院（東京 港区）
▽国立病院機構東京医療センター（東京 目黒区）
▽みみはなのどあそうクリニック（富山市）
▽関西医科大学附属病院（大阪 枚方市）
▽大阪市立大学医学部附属病院（大阪 阿倍野区）
▽岡山大学病院（岡山市）
▽早島クリニック（岡山県早島町）
▽九州大学病院（福岡市）
担当はそれぞれの医療機関の耳鼻咽喉科です。ほかにも対応できる病院などが増えてきています。病院やクリニックに問い合わせてみてください。
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December 15, 2019 at 02:11AM
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