解くべき課題は何か。それを知る第一歩となるのが、「可視化」だ。見えないものを修復することはできない──。そんなヴィジョンを掲げ、衛星データによる課題発見に勤しむ企業がある。「Planet」は約140基の小型衛星を通じた地球のモニタリングによって、わたしたちの惑星を救う基盤をつくるつもりだ。(雑誌『WIRED』日本版VOL.35より転載)
TEXT BY KOTARO OKADA
PHOTOGRAPHS BY PLANET LABS
SDGsにおける環境に対するターゲットでは、驚くことに指標の68%において達成度評価に必要なデータが揃っていない状態が報告されている。SDG2(飢餓をゼロに)、SDG6(安全な水とトイレを世界中に)、SDG11(住み続けられるまちづくりを)では特にデータ不足が深刻だ。地球規模の課題を解決するためには、可視化が第一歩となる。そのために必要なのは、地上ではなく「空からの眼」なのかもしれない──。
「 多くの人は地図を眺めるとき、世界は静的だと思っている。実際は建物や道路の建設、人や船舶の移動、木の伐採、作物の収穫などによって世界は常に変化しているんだ。でもGoogleマップに表示されるのは数年前の写真だ。起きている変化を記録するためには、リアルタイムで写真を撮らなければいけないと思わない?」
そう語るのは、NASAを辞め、2010年に同僚2人とともに「Planet(当時の社名はCosmogia)」を立ち上げたCEOのウィル・マーシャルだ。Planetは約140基の小型人工衛星を軌道上に飛ばし、1日あたり120万枚の写真を撮影する。少なくとも1日1度は同じ場所を撮影し、全地球の常時モニタリングを行なう。資金調達額は3億5,000万ドルを超え、13年にはピーター・ティール率いる「Founders Fund」からも出資を受けた。
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1/410月に日本上陸した台風19号「ハギビス」。涸沼川付近の洪水をPlanetは撮影し、BBCなどが報道に利用。
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2/4アマゾン保護協会はペルー南部の違法な金採掘をモニタリングし、警告を発表。政府による介入が行なわれた。
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3/4アラスカ州のイグジット氷河は気候変動により氷河融解が進むエリア。科学者と協力しながらその動きを追跡。
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4/4海の熱帯雨林と呼ばれ、生物多様性が高い「サンゴ礁」をモニタリングする。「Allen Coral Atlas」との共同研究。
「見えないものを修復することはできない」というヴィジョンを掲げ、多くの政府、慈善団体、国連機関と協力し、気候変動、自然災害、人権侵害における「データギャップ」を埋めようとしている。
Planetが事業化の活路を見いだしたのは農業、政府機関、そして地図の分野だった。畑の様子を高度な赤外線スペクトル帯で監視し、農作物の収穫量改善を実現した。政府機関と協力し、国境警備や沿岸警備、洪水、火災、地震や台風などの災害対応に衛星画像データを活用する。現在は日本政府と協力し、日本海における沿岸警備や違法漁業の取り締まりも行なっている。地図の分野ではグーグルなどの企業と提携。地図情報を最新に保つためのデータを提供してきた。
また、古巣であるNASAと連携し気候変動の追跡のための変数の調査を行なうほか、「Bloomberg Philanthropies」とカリフォルニア州との3者で気候変動に立ち向かうための「Satellites for Climate Action」を19年9月に始めた。最初のプロジェクトは世界中の石炭火力発電所を追跡すること。その稼働状況や、スケジュール通りに廃止が行なわれているかをモニタリングする。
インド政府とグーグルが行なう機械学習を活用した洪水予測の取り組みでは、Planetは過去の洪水にまつわる衛星データを提供した。世界各地のNGOと協力し、ブラジルの森林伐採の調査や、違法漁業からのサンゴ礁保護にデータを活用している。
「 NASAでは本当に多くのことを学んだけれど、提供できる機能を増やし、製造コストを削減することで、これまでとはまったく異なる人工衛星がつくれると思ったんだ。NASAの場合は科学と宇宙探査がその目的だったけれど、地球環境や人道支援のためにデータを活用できるはずだってね」
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1/3「Dove」は約5kgの重さで、片手で持てるほど小さい。衛星本体のサイズは10cm×10cm×30cm。ソーラーパネルを展開すると、その横幅は70cmまで拡がる。
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2/3サンフランシスコ市内に2018年に開設した研究施設。
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3/3国際宇宙ステーションの宇宙飛行士により撮影されたPlanetの小型人工衛星。PHOTOGRAPH BY NASA
Planetは現在120基の「Dove」、15基の「SkySat」、そして5基の「RapidEye」という3種類の人工衛星を打ち上げている。「実は衛星に使われる部品の90%は、すでにスマートフォンに入っている」とマーシャルは言う。GPS、カメラ、プロセッサー、ハードドライヴ、電池、無線システムに加速度センサーやジャイロセンサーなど、すべてスマートフォンに備わっているものだ。
ただし、その精度は大きく異なる。宇宙で衛星を動作させるためには高度な無線システムが必要であり、地表から500kmの高さから“写真を撮る”ためには巨大な望遠鏡と最新のカメラシステムが求められる。そして宇宙環境に耐えられる機体も。
地球環境保護のためのモニタリングは、見方を変えれば「監視」につながる。しかしマーシャルはその懸念を否定する。「わたしたちの数m上空を飛ぶ可能性があるドローンと異なり、500km上空からの写真では個人は特定できない。もちろん誰もがそのデータを好き放題に使えるわけでもない。ぼくらにはテクノロジーを活用し社会に最もよい影響を与える責任があり、それは地球環境への情熱を示すことだと思っているんだ」
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December 12, 2019 at 07:00AM
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