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新型コロナウイルスに苦しむ米国、遠隔医療にどう取り組んでいるのか - @IT MONOist

 本連載第56回で米国連邦政府の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策を取り上げたが、臨床現場では、医療専門家主導の遠隔医療技術導入が急拡大している。

⇒連載「海外医療技術トレンド」バックナンバー

米国医師会が新型コロナウイルス感染症対応の遠隔医療ガイドラインを公開

 本連載第21回で、モバイルヘルスに取り組む米国医師会(AMA:American Medical Association)の活動を取り上げたが、新型コロナウイルス感染症の拡大による医療崩壊の危機に対応するため、医療施設レベルでの新技術導入支援を積極的に行っている。新技術の中で特に米国医師会が注力しているのが、遠隔医療サービス、先進的医療機器、モバイルヘルスアプリケーションである。

 米国医師会は、2018年10月16日、大規模病院から中小規模医療施設に至るまで、医師によるデジタルヘルス関連ソリューションの導入を加速させることを目的とする「デジタルヘルス導入プレイブック」のロードマップを発表し(関連情報)、機器やトラッカー、センサーを利用して、伝統的な臨床環境の外にある患者生成データを捕捉・記録する遠隔患者モニタリング(RPM)の導入向けのリソース集(関連情報)などを提供してきた。

図1 図1 米国医師会(AMA)「遠隔医療導入プレイブック」(2020年4月6日)(クリックで拡大) 出典:American Medical Association (AMA)「Telehealth Implementation Playbook」(2020年4月6日)

 その後2020年4月6日、米国医師会は、リアルタイムオーディオや遠隔視診など、医師と患者の間で診察室の壁を超える新技術の導入を支援する指針として、「遠隔医療導入プレイブック」と題するガイドラインを公表した(図1参照、関連情報)。

 今回の遠隔医療に関するガイドラインは、先述の「デジタルヘルス導入プレイブック」シリーズの改訂版として追加発行されたものである。特に、新型コロナウイルス感染症緊急対応時の安全管理の観点から、遠隔医療や遠隔ケアサービスは、米国内にいる約1億人の慢性疾患患者に対するケアを妨げることなく、「ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)」をバーチャルに実現できるというメリットがあり、米国医師会も積極的に採用を推奨している。

 遠隔医療には、医師相互間および医師・患者間をつなぐことができるさまざまなツールやプラットフォームが含まれるが、AMAガイドラインでは、リアルタイムオーディオや視覚技術を介して患者と臨床医をつなぐ、デジタルヘルスソリューションとしての遠隔医療に焦点を当てている。それは、伝統的な対面診療の代替手段として利用できるものであり、場合によっては、診断、問診、処置、教育、ケア管理、患者の自己管理などのケアの提供に利用できるとしている。

 このように、新型コロナウイルス感染症緊急対応時にメリットが大きい遠隔医療だが、臨床現場における導入の障害となる課題も存在する。AMAガイドラインでは、2016年および2019年に米国医師会が実施した遠隔医療を含むデジタルヘルスの利用・導入意向調査結果(関連情報)などを基に、以下のような点を挙げている。

  • 一貫性のない診療報酬モデル
  • 州の枠を超えた免許の課題
  • 法的規制の課題
  • セキュリティ、プライバシー、機密性に関する懸念
  • 医療費用、効率化、アウトカムにおけるインパクトに関するエビデンスの欠如
  • 安全で有効性のあるケアを提供するという臨床的責務へのインパクトの懸念
  • 物流スペースの課題

 これらの課題の中から、実際の遠隔医療における要点として、ケアの継続性、州の枠を超えた免許、支払方法の3つを挙げている。

 その上で、このガイドラインでは、以下の12段階を、導入手順として挙げ、概説している。

  • (ステップ1)ニーズの特定:課題は何か
  • (ステップ2)チームの構築:誰をいつ関与させる必要があるか
  • (ステップ3)成功の明確化:何を達成しようとしているのか
  • (ステップ4)ベンダーの評価:何が適正な技術か
  • (ステップ5)ケースの策定:どのような方法で政治的・財務的な調達を得るか
  • (ステップ6)契約:ベンダーとの間で期待されるタイミング、予算、計画は何か
  • (ステップ7)ワークフローの設計:この技術を統合するために何を変える必要があるか
  • (ステップ8)ケアチームの準備:みんながこれを成功させるために必要なことを知っているか
  • (ステップ9)患者とのパートナーリング:患者は何を必要としているか
  • (ステップ10)導入:どのような方法で実際に機能するか
  • (ステップ11)成功の評価:機能したか
  • (ステップ12)スケーリング:次は何か

 各ステップの中で、ベストプラクティスだけでなく、回避すべき失敗も例示している他、必要に応じて、小規模医療施設向けの留意事項を示している。さらに、巻末のAppendixでは、各ステップの実行に役立つフレームワークやテンプレート類、調達時に必要なベンダー情報、チェックリストなどをまとめている。なお、サイバーセキュリティに関しては、以下のような質問項目について留意点を例示している。

  • サイバーセキュリティ攻撃に関して、何を知る必要があるか
  • サイバーセキュリティが現場/組織に影響を及ぼす可能性がある方法について、何を知る必要があるか
  • 技術の導入時期について、何を考える必要があるか
  • 規制に関して、何を知る必要があるか

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April 17, 2020 at 08:00AM
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