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営業休止が続くそのレストランは、生き残るために“食料品店”として生まれ変わった|WIRED.jp - WIRED.jp

新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界中の飲食店が営業休止を余儀なくされている。こうしたなかニューヨークにあるレストランの一部は、選りすぐりの食材を調理のノウハウとともに提供する“食料品店”へと業態転換を図っている。

New Yorker

restaurant

PHOTOGRAPH BY CAROLINE TOMPKINS

いま最も大切にしているもののひとつが、スペイン産オリーヴオイルの5ℓ入りの巨大なプラスティックボトルである。ニューヨークのベドフォード・スタイブサント地区にある「Hart’s(ハーツ)」というレストランで購入したものだ。

霧雨に見舞われた5月上旬の日曜日、わたしは異常なほど静かに並ぶ人々の列に加わっていた。並んでいた全員がマスクを着けており、うち何人かは手袋も着用していた。そして少なくとも6フィート(約1.8m)離れて立ち、店内のテーブルに案内されるのを待っていた。

テーブルの後ろでは、ハーツのオーナーであるニアルズ・ファロン、リア・キャンベル、ニック・パーキンズの3人が、商品を袋や箱に詰めていた。オリーヴオイルや地元の農家でとれた農産物、卵、肉(絞めたての鶏をそのままローストできるように塩漬けにして干したものもあった)、シーフードの缶詰、ワインや酒といったものだ。彼らは数ブロック先にある「Fly(フライ)」や、ロウアー・イースト・サイドの「Cervo’s(セルヴォズ)」のオーナーで運営も手がけている。

在庫処分が主力事業に

今年の3月上旬以来、ハーツ、フライ、セルヴォズは閉店している。彼らはこれまでにテイクアウトを提供したことはなく、いまから始めようともしなかった。自分たちのメニューはテイクアウトには向かないと感じていたし、スタッフを新型コロナウイルスに感染するリスクに晒したくなかったからだ。

ところが、在庫処分のために始めたことが、いまや完全な主力事業になった。これらの3つの店舗はすべて、(そしてニューヨーク市の数多くのほかの店も)いまや非接触型の食料品店として効果的に機能しているのだ。彼らはオンラインで注文された商品を店頭で引き渡すために、週1日だけ店を開けている。

これから外出制限が解かれたあとも喜んで続けたいと思うことがあるとすれば、それは近所のレストランで食料品を買うことだろう。プロのシェフは調理の仕方だけでなく、それと同じくらい重要なことを知っている。何を調理すべきか、そして最高の食材をどこで手に入れるかといったことだ。

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食品販売への移行は「自然」なことだった

その前日、わたしはブルックリンのグリーンポイントにある「Archestratus(アルケストラトス)」の外で列に並んでいた。カフェを併設した素晴らしい書店で、この店のことをオーナー兼シェフのペイジ・リパリは「最高の非接触型ワンストップショップ」と呼んでいる。

戸口のすぐ内側にあるテーブルの後ろからリパリが渡してくれた箱には、牧草で育てた牛の牛乳半ガロン(約1.9ℓ)、中力粉2ポンド(約0.9kg)入りの袋、そしてインディアナ州にある精肉店「Smoking Goose(スモーキング・グース)」から取り寄せた大きな豚すね肉が入っていた。すべて数日前にウェブサイトで注文したものだ。

さらにリパリは、ニュージャージー州の「Bodhitree Farm(ボディツリーファーム)」でとれたエンダイヴとレインボースイスチャード(フダンソウ)、そしてソラマメが詰まったプラスティックバッグも手渡してくれた。

Archestratus

ブルックリンのグリーンポイントにあるカフェ併設の書店「Archestratus(アルケストラトス)」オーナー兼シェフのペイジ・リパリは、自身の店のことを「最高の非接触型ワンストップショップ」と呼んでいる。PHOTOGRAPH BY CAROLINE TOMPKINS

リパリにとって、食品販売への移行は自然なことだった。15年にアルケストラトスを開店してすぐ、リパリは定期的に店のコンセプトを変え始めた。当初は調理済みの食品やペストリーを日中に販売していたが、次第に家庭料理を出す夕食会を開くようになった。家族に伝わるシチリア料理のレシピに合わせて、ゲストシェフを招いて提供していたのだ。

このため新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の前から、リパリはさまざまな乾物類をストックしていた。カリフォルニア州の生産者であるRancho Gordoから取り寄せた豆や、イタリア産のピスタチオスプレッドといったものだ。

こうした多彩な商品を提供することで、リパリは代々の“遺産”を引き継いでいたと言えるかもしれない。彼女の祖父母が数十年にわたって市内北部のブッシュウィックで開いていた「Lipari & Sons Latticini」では、新鮮なモッツアレラチーズや食料品を販売していたからである。

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「Archestratus(アルケストラトス)」の店内には、市内のベーカリー「She Wolf Bakery」から取り寄せたパンも並んでいた。PHOTOGRAPH BY CAROLINE TOMPKINS

“ニューノーマル”の時代に向けて

新型コロナウイルスに対する安全の確保や金銭的な理由から、リパリやファロン、キャンベル、パーキンズは、今年3月の時点で従業員をすべて一時解雇した。いまの事業が順調に進めば(この前の週末にリパリは230件の注文を受けている)、たまった請求書の全額を支払い、しかるべきタイミングでスタッフを再雇用し、レストランに客を迎えるつもりでいる。

だが、いかに将来が不確実であるのかを誰もがはっきりと認識している。そして、“ニューノーマル”の時代に合わせたアイデアに向き合っているところだ。

「今後やってくる嵐を切り抜けるには_」と、電話越しにファロンは言う。「(これからのレストランは)食事するだけの場所ではなく、もうちょっと多様化する必要があるかもしれない」

ファロンや仲間たちは、顧客にレシピや料理のアドヴァイスを提供し、自分たちが気に入っている費用対効果の高い商品を販売することに喜びを見出しているという。「ぼくらは常に、コミュニティにおいしい食事、おいしいワイン、そして特別な場所を提供するビジネスを続けてきたんだ」と、パーキンズも言う。

「いまはいろんな意味で同じようなことをやってるんです。単にビジネスモデルが違うだけでね」と、リパリも言う。「多くの人たちが、こう言ってくれたんです。『いつもの店で買うものよりおいしい』とか『この小麦粉は、いままでのパンづくりで使ったなかでも最高だ』ってね。だから、このままでいいじゃないかって思うの」

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May 19, 2020 at 10:00AM
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