先日、沖縄県で救急車を要請した40代の女性が、新型コロナの感染が疑われたため、救急搬送が遅れ、搬送先の病院で亡くなられた事例が報道されました。
「娘が倒れて熱もある」と119番 コロナ疑い救急遅れ 女性死亡
この患者さんは結果的に新型コロナの検査は陰性であり、別の原因で心停止となったとのことです。
新型コロナの流行に伴い、医療体制の逼迫、受診行動の変化などによって新型コロナ以外の疾患にも影響を与えています。
コロナの影響による外来・入院患者数の減少と救急搬送の遅延
「地域における外来・入院患者減少」が新型コロナを契機に発現している可能性 - 日病・相澤会長
日本国内で新型コロナの流行に関連して、医療機関への受診者数が減少していることが報告されています。
この原因として、病院で新型コロナに感染することを懸念して患者さんが受診を控えていること、新型コロナの院内感染を避けるために緊急ではない手術が延期されたこと、医療機関が新型コロナに対応するためにそれ以外の疾患に対応するキャパシティが減少していたことなどが考えられます。
また冒頭の沖縄県の事例は搬送先の病院が決まる前の段階で時間がかかってしまったようですが、4月の第一波の時期には発熱患者が救急車を要請しても、新型コロナの可能性を考慮して受け入れをためらう医療機関が増加し、救急隊の現場到着から搬送開始までに30分以上を要した「救急搬送困難事案」が増加しました。
コロナは、コロナ以外の様々な疾患に影響を及ぼしている
海外でも「新型コロナによる、新型コロナ以外の疾患への影響」が問題になっており、特にこれまでに日本よりも新型コロナ患者が多く報告されている欧米では深刻な問題となっています。
アメリカ全土の退役軍人病院の全入院患者数および脳梗塞、心筋梗塞、心不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、虫垂炎、肺炎、新型コロナウイルス感染症の入院患者数を、2019年の同時期と比較したところ、新型コロナウイルス感染症以外の疾患の入院患者数は著明に減っていたと報告されています(JAMA. 2020;324(1):96-99.)。
「そうか・・・新型コロナには心筋梗塞を減らす効果があったのか!」というわけではもちろんなく、これは患者さんが心筋梗塞を発症しても新型コロナに感染することを懸念して病院を受診することをためらった、新型コロナ対応のため病院がそれ以外の疾患への対応ができなくなっていた、などの影響によるものと考えられます。
実際に、アメリカでは心臓カテーテル検査・治療そのものの件数が減っていることが報告されています(https://doi.org/10.1016/j.amjcard.2020.06.009)。
心筋梗塞、狭心症などの患者さんが自然に減るわけではないため「コロナの影響で診断されずにいる心筋梗塞、狭心症の患者が増えている」と考えるのが妥当でしょう。
院外心停止の患者が増えており、市民による心肺蘇生を受けた患者は減っている
イタリアでは、2019年と比較して2020年は院外心停止の患者が増えていることも報告されています(N Engl J Med 2020; 383:496-498)。
新型コロナが原因で心停止した患者も増えているだけでなく、受診を控えたために心停止に至った新型コロナ以外の疾患の患者も含まれているものと考えられます。
さらに問題なのは、2019年と比較して、2020年は院外心停止に対して市民による心肺蘇生が行われた割合が15.6%下がっており、これは新型コロナに自身が感染することを懸念して市民が心肺蘇生を行わなくなったのではないかと考えられます。
なお近年は救助者の口から患者の口へ直接息を吹き込む人工呼吸をしなくても胸骨圧迫(いわゆる心臓マッサージ)だけでも予後を改善できることが分かっており、人工呼吸はしなくても良く、布などで心停止患者の鼻と口を覆い胸骨圧迫を行えば感染のリスクを下げることができます。
がんと診断される患者も減っている
心筋梗塞、心停止などの急性期疾患だけでなく、新型コロナは慢性疾患にも影響を与えています。
アメリカでは過去と比較して、乳がん、大腸がん、肺がん、膵がん、胃がんと診断される患者数が減っています(JAMA Netw Open. 2020;3(8):e2017267.)。
新型コロナが流行したからと言って、がんは進行を止めるわけではなく、これも診断されずにいるがん患者が増えていることを意味します。
オランダではがん罹患率が40%も減少しており、英国ではがんの疑いのある患者の紹介受診が75%減少しているとされており、新型コロナの流行を経験した多くの国で同様の傾向がみられています。
がんの診断が遅れることにより、より進行した病期で診断され、悪い結果につながる可能性が高いと考えられます。ある研究では、アメリカでは新型コロナの影響により33,890人の過剰ながん死亡者が増加する可能性があることが示唆されています。
新型コロナ流行期は死産が増える
ロンドンの大学病院で、新型コロナ流行前の1681人の出生と新型コロナ流行期の出生1718人を比較した研究では、死産の発生率は新型コロナ流行期の方が、流行前よりも死産が増えていたと報告されています。
これらの妊婦は新型コロナに感染していたというわけではなく(妊婦の新型コロナ症例の多くが無症状という報告もあり、感染していた可能性もあります)、イギリスでの大規模な新型コロナの流行によって、妊婦の受診行動が変わった(病院に行って感染したくない、医療機関の負担を増やしたくない、など)ことや、医療機関における負荷の増加(スタッフの不足、超音波検査やスクリーニング検査体制の不足など)によるものの可能性が考えられています。
大人だけでなく小児の医療にも悪影響が
ここまでは主に成人が罹る疾患への影響をご紹介してきましたが、新型コロナの影響は成人の疾患だけにとどまりません。
イタリアでは小児救急外来を受診する患者の数の減少が報告されており、小児医療への影響も懸念されます。
また、ドイツではケトアシドーシスという重症の病態で診断に至る1型糖尿病患者の数が増えていることが報告されており、受診が遅れることで重症の病態まで進展してから診断に至る症例が増えています。
新型コロナ流行の影響は、それ以外の医療への影響も考慮する必要がある
このように、新型コロナが影響することにより、新型コロナ以外の様々な疾患に影響を与えることが分かっています。
現在、新型コロナ対策と経済との両立を目指して綱渡りの状況が続いていますが、医療に与えるインパクトは新型コロナそのものだけでなく、それ以外の疾患への影響も含めて考える必要があります。
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August 16, 2020 at 10:12AM
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