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仮想通貨のマイニングに誘うマルチ商法、詐欺被害を拡大させた5人の手口|WIRED.jp - WIRED.jp

ビットコインのマイニング設備への投資と称して、日本円にして800億円近くをだまし取った「BitClub Network」の関係者が米国で逮捕された。被害者たちを「頭の悪い投資家」「羊」と呼んでいたという仮想通貨の詐欺集団は、いったいどんな手口で多額の資金をかき集めたのか。

WIRED(US)

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ANDREY RUDAKOV/BLOOMBERG/GETTY IMAGES

仮想通貨(暗号通貨、暗号資産)の世界は、想像上の投資商品で溢れている。フェイクコイン。偽のブロックチェーンサーヴィス。偽の仮想通貨取引所──。そしてこのほど、ビットコインのマイニング設備群への投資と称して被害者から7億2,200万ドル(約791億円)をだましとったとして、BitClub Networkという企業の4人が逮捕された

連邦検事はこの事件を「仮想通貨の難解な世界」における「ハイテクな陰謀」と呼んでいる。だが、今回の事件は仮想通貨を軸にしながらも、典型的なマルチ商法の特徴を有している。ハッシング(ハッシュ化)と呼ばれるプロセスを通じてビットコインを発行するマイニング設備を購入するために、BitClub Networkに送金するよう投資家たちに促したのだ。

この設備を稼働させることで、誰もが(理論上は)儲かるはずだった。この企業はまた、新規参加者を募集した既存の投資家に報酬を与えていたとされる。起訴状によると、一連の計画は2014年4月に立ち上がり、19年12月初旬まで続いた。

逮捕された4人のうち、マシュー・ブレント・ゲッチェ、オバデア・シンクレア・ウィークス、シルヴィウ・カタリン・バラチの3人は通信詐欺を共謀し、非登録証券の勧誘および売付を共謀したとされる。4人目のジョセフ・フランク・アベルは、後者のみの嫌疑をかけられている。氏名が明らかになっていない5人目は逃走中だ。

「まぬけども」を狙った詐欺の仕組み

一連の計画は、当初は比較的小規模な詐欺だったようだが、それは大きな野望へと拡大していった。グループ内でのやりとりによると、共謀者たちは投資家をカモにすることの簡単さにほくそ笑み、「まぬけどもの上にこのモデル全体を構築する」と述べていた。被告人らは被害者を「頭の悪い投資家」「羊」などと表現していたという。

これに対して、コーネル大学教授でブロックチェーンのスタートアップであるAva Labsの最高経営責任者(CEO)のエミン・ガン・シラーは、Twitterで「彼らは間違ってなかった」と皮肉を述べている

BitClub Networkの設立から数カ月後の14年10月、ゲッチェは「軌道に乗るまで当初の30日間は偽装する」必要があると投稿し、共謀者に会社の収入の数値を操作するよう指示したとされる。彼らは数値が正しく見えるよう、一貫性のない箇所の操作に同意したというのだ。こうした細工は、すぐにより大胆なものになった。ゲッチェはのちに、同社が「日々のマイニングの稼ぎを今日から60パーセント増大する」ように提案したとされる。

起訴状に含まれたやりとりによると、「それは持続可能じゃない。ポンジスキーム[編註:投資家の資金を運用せず、そのまま別の投資家に配当と称して回す詐欺の一種]だろう。高速に現金化するポンジ……でも、わかった」とバラチは答えている。17年9月のメールでゲッチェは、BitClub Networkが「ここからマイニングの稼ぎを著しく減少させる」と指示したうえで、「RAF[編註:rich as fuck=超リッチ]になってリタイアしてやるぜ!!!」と述べていた。

一部の出資者には「創設者」の立場を付与

また被告人たちは、BitClub Networkは「透明性を確保」し「大きすぎてつぶせない」と宣伝するマーケティング資料を携えて世界を巡り、証券法に違反して会社の株式を売却したとされている(BitClubのウェブサイトは現在、米国またはフィリピンの投資家は投資できないという免責事項を記載している)。被告のひとりは一時、資金でマイニング設備を購入することなくBitClubの株式を売却するのは「正しくない」と深い反省を示したようだ。

被害者とされている人たちの身元は明らかでないが、同社が活用していたオンラインヴィデオや広告に手がかりがあるだろう。

ペンシルヴェニア州の地域・経済開発局と関連がある非営利の投資会社Ben Franklin Technology Partnersのウェブサイトに表示されている広告によると、BitClub Networkと称する企業が、4つのマイニングプールとされるものへの出資に合意した人に「創設者」としての立場を与えると宣伝している。「GPU持ち分」という単位あたり1,000ドルが実勢価格とされていたが、この単位はマーケティング資料には詳述されていない(Ben Franklin Technology Partnersはコメントの要請には応じていない)。

18年には、Facebookに掲載されていたBitClub Networkの大量の広告が、ザンビアのジャフェット・メサの目にとまっている。彼はMediumに投稿して、これが詐欺の兆候であると解説していた。

いまもはびこる仮想通貨詐欺

徹底した透明性というBitClubの主張にもかかわらず、マイニング設備とされるものの所在は謎のようである。そして同社の背後にいる人々は特定しにくい。「BitClubに関する誇大広告に引き寄せられる人の数には驚きました」と、メサは記している。「これについてソーシャルメディアに投稿する人の数が物語っています。Facebookはその点で際立っています」

なお、マレーシアや南アフリカを含む国々では、BitClub Networkのコミュニティに関連するFacebookページは依然として活動が活発であり、幾万人ものメンバーがいる。

仮想通貨の世界には詐欺がはびこっており、特に17年に多発した。ビットコインの価格が急上昇し、ありもしない仮想通貨やブロックチェーンを利用した商品に巨額投資をするようにと、詐欺師が被害者を誘惑したのだ。

仮想通貨の採掘に用いるプラットフォームであるマイニングプールへの参加に関する詐欺も、詐欺師たちの間では人気だった。まるでお金を生み出すかのようなビジネスヴェンチャーへの参加を謳って、顧客に売りつけるのだ。

こうした手法は、いま多くの人々にとって興味をそそるものになっている。自宅で仮想通貨をマイニングしようと目論む人たちにとって、マイニングそのものが困難になってきているからだ(“プール”のような大きな採掘プラットフォームに参加すれば効率がよく、見返りも大きいというセールスポイントである)。

今年1月には、香港の男性が同様のマイニングプール詐欺で告訴された。高層ビルから札束をばらまくという派手な宣伝も展開したとされている。

通信詐欺の罪には最高20年の刑が科され、証券法違反については5年となっている。被告の弁護士にコメントを求めようとしたが、すぐには接触できなかった。

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