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中東で、中国が米国に取って代わることはできない - 日経ビジネス電子版

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イランのザリフ外相(左)と中国の王毅外相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 第2次世界大戦後に作り上げられた国際的な仕組みは現在、大きく動揺している。国際秩序の動揺と言ってもよいだろう。

 このように言うと、自由貿易に代表される自由な経済秩序や、国連、世界貿易機関(WTO)に代表される多国間主義といったグローバルな政治と経済のメカニズムの動揺に目が行きがちだ。だが、地域情勢も不安定化し始めている。最も顕著なのが、これまで中東と呼ばれてきた地域である。

 第2次世界大戦後、地域の安定は大国同士の関係でほぼ決まった。米ソ冷戦が終わり、米国が唯一の超大国となり、一見したところ米国は圧倒的な存在となった。だが実際には、米国の相対的な力は一貫して低下してきていた。特にトランプ政権となり、外交上のミスを連発し、米国の影響力は急速に低下している。

 その「力の空白」を埋めるように、中東においてイランとトルコが影響力を強めている。どちらも歴史において大帝国を張ったことのある国である。米国を取り去ると、この2国が浮上してくる。歴史を生き抜いてきた伝統の力は大したものだと、つい納得したりする。

 加えて、中東において中国とロシアの存在感が増大しているという。イラン危機は米中覇権戦争の一環だという見方まで現れている。果たしてそうであろうか?

中東進出は、危険を抱え込むこと

 ロシアはロシア帝国とソ連の後継であり、ロマノフ王朝時代から中東と深い関係にある。ソ連時代も中東において米国と覇を競った。土地勘もあり、やり方も知っている。しかし今日のロシアは、依然として強大な軍事力を誇っているものの、英国際戦略研究所(IISS)によれば2017年の軍事支出は日本より少ない。GDP(国内総生産)は韓国より小さく日本の3分の1にまで縮んでいる。総合国力において昔の面影はもはやない。影響力においても限りがあるということだ。

 中国はどうか。国力を急速につけてきているが、歴史上、中東と全く関わってこなかった。中国の経験と知識には限界がある。

 中国の一帯一路構想が、世界制覇に向けた中国のグランドデザインのように喧伝(けんでん)されている。しかし中国の現場から伝わってくる感触は、それとはほど遠い。大きなスローガンを次々に打ち出すものの、それを支え実行する理念、原則、ルール、実施の仕組みは、現場に近づけば近づくほど中身が見えなくなるのだ。

 それに進出地域における経験と知識の不足という壁が立ちはだかる。これが中国の実態と言ってよい。

 中国の中東への進出は、中国が新たに大きな危険を抱え込むということでもある。

 一帯一路構想を、中国を中心にかつて存在した朝貢貿易システムの再現と捉える人もいる。だが昔は、マルコポーロの例から分かるように、中国に来る人たちが道中のリスクをすべて負担した。しかし今度は中国が自ら出かける。リスクは中国が負わなければならない。中国が中東に積極的に関与するということは、宗教や民族など様々な理由から怨念が渦巻き、複雑で、世界一危険とみられる場所に足を突っ込むということなのだ。

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January 22, 2020 at 03:04AM
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