今年も米ゴルフ界は、ハワイ州マウイ島のカパルアで一年の幕が開いた。舞台はグリーン、フェアウエーが新しい芝に張り替えられるなど、コースを9カ月間クローズして改修を終えたばかりのプランテーションコース。グリーンは速く、フェアウエーもボールが転がるようになり、クリスマスが終わってから現地入りしたダスティン・ジョンソン(米国)は「難しくなっている」と話した。
通算20アンダー以上での優勝が続いたセントリー・チャンピオンズだが、今年は14アンダーで決着がついた。ただ、選手の印象はおおむね好評。ジョンソンも「いい意味で」とその変化を評した。
ところで、2020年の新年を世界ランキング1位で迎えたのは、1年前もその位置にいたブルックス・ケプカ(米国)なのだが、実はかなり珍しいことだった。いや、00年代はむしろそれが当たり前。よって、ゴルフの世界ランクが注目されることも、ほとんどなかった。
なぜかといえば、タイガー・ウッズ(米国)の独壇場だったからである。00年からの10年間を振り返ると、1999年8月15日にデビッド・デュバル(米国)からトップの座を奪い返したウッズが、00年の第1週を世界ランク1位で迎えると、そのまま04年9月4日まで、264週にわたって首位に立ち続けた。その後、割って入ったビジェイ・シン(フィジー)が05年の年明けは1位だったが、同年6月12日にトップへ返り咲いたウッズが、なんとそのまま10年10月30日までその地位を保った。この間の連続281週は、歴代1位としてレコードブックに刻まれている。
しかしその後、世界のゴルフ界は群雄割拠の時代へと突入していく。10年から19年までの10年間を見ると、なんと12人もの選手が世界ランクトップに立っているのだ。その12人を順に列挙すると、ウッズに始まり、リー・ウェストウッド(英国)、マルティン・カイマー(ドイツ)、ルーク・ドナルド(英国)、ロリー・マキロイ(同)、アダム・スコット(オーストラリア)、ジョーダン・スピース(米国)、ジェイソン・デイ(オーストラリア)、ダスティン・ジョンソン(米国)、ジャスティン・トーマス(同)、ジャスティン・ローズ(英国)、ケプカと続いた。
入れ代わり立ち代わり、これだけ多くの選手が1位に立ったという状況は、今のトッププロの実力がいかに拮抗しているか、ということを示している。
また、世界ランクを詳しく見ていくと、別の面からも彼らが激しくしのぎを削る様子がうかがえる。というのも、19年に関しては、ケプカが1月の1週目と12月の最終週でともに世界ランク1位だったが、10年以降、年初に1位だった選手が、年末も1位だったことはなかったのだ。はじめの方で珍しいと表現したのは、そういう意味である。
ケプカにしても、昨年1年間、ずっと世界ランク1位だったわけではない。年明け早々、その座をすぐにローズに譲り、さらにジョンソン、ローズ、ジョンソンと目まぐるしくトップが代わった。5月19日、全米プロ選手権に勝ったケプカが1位に復帰してそのまま一年の終わりを迎えたが、改めて10年以降の順位変動を見ると、1週で1位の座を明け渡したケースが9回もある。また、連続10週に達しなかったケースは26回。18年9月10日にローズがトップに立ってからは、毎週のように、あるいは毎月のようにローズ、ジョンソン、ケプカの3人が、1つの枠を巡って争ってきた。
激しいのは上位だけに限らない。
14年の1週目に世界ランク1位だったウッズが、17年には一時、その順位が674位まで下がったのは故障もあって例外的だが、14年の中盤に1位となったスコットも18年の夏には76位まで下げている。17年の年初に1位だったスピースは、今では43位と低迷。ドナルドは12年の年初めは1位だったが、17年にはその順位が3桁となり、現在は430位だ。
つまり、全体の差も縮まっているため、上位の選手でも不振が続くと、一気に順位が下がりうる。それぐらい、気の抜けない状況になっている。
ただ、見方を変えたとき、ウッズのすごさも透ける。
前述したように、ウッズは99年8月半ばから264週連続で世界ランク1位の座を守った。その後、05年6月12日から10年10月30日まで、今度は281週連続でトップに立っている。その間、ライバルがいなかったというより、やはり力が突出していたのだろう。今の争いの中で、100週を超えて連続トップに立つということは想像しがたい。ウッズの281週連続が記録ではあるものの、今後、この数字に近づく選手が現れるのかどうか。
さて、世界ランクを改めて俯瞰(ふかん)すると、そんな時代背景さえも読み解けるわけだが、このランキングは五輪の出場権にも影響を及ぼすだけに、今後も何かと目にすることがありそうだ。
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