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コード決済で「キャッシュレス」は日本に根付いたか? - ITmedia

 「キャッシュレス」という言葉が業界関係者だけでなく、日常生活のあちこちに溢れた最初の年が2019年だったといえるかもしれない。ニュースを見れば新しい決済サービスやキャンペーン告知とともに「キャッシュレス」の話が紹介され、街に買い物に出かければ店にはポイント還元のポスターと一緒に「キャッシュレス」という言葉が踊っている。都市部であれ、地方の人口の少ない町であれ、あらゆる場所で「キャッシュレス」の単語が目について、「キャッシュレス」という概念が認知されるに十分な効果があったと思う。

 そんな「キャッシュレス元年」とも呼べる19年だが、この指針となっているのが18年4月に経済産業省がまとめた「キャッシュレス・ビジョン」の中で掲げられている「25年までに現状(18年初頭時点)で20%前後という日本のキャッシュレス決済比率を40%まで引き上げる」という目標だ。20%という数字は17年時点で業界団体などがまとめた数字を参考にしたものであり、その比率は9割近くがクレジットカード決済だとされている。新たにキャッシュレス決済の対応店舗や新サービスが18年以降続々と増えた経緯もあり、19年7月時点での概算は「24.4%程度」(経産省)だという。

 いずれにせよ、2020年を迎えた現在、5年以内にこの数字を2倍程度まで引き上げる必要があるわけで、並々ならぬ努力が必要となる。特に東京都は「『未来の東京』戦略ビジョン」の中で都内の25年におけるキャッシュレス決済比率50%達成をうたっているわけで、よりハードルが高い。今回は前編で19年のキャッシュレス変革を振り返りつつ、後編で20年+αの展望を少しまとめたい。

2025年までに東京都内のキャッシュレス決済比率50%達成を目指すという(「『未来の東京』戦略ビジョン」より抜粋)

多数出現したコード決済はキャッシュレス化に貢献したのか?

 ポイント還元事業がスタートしてまだ約3カ月、2019年(あるいは19年度)の集計データが出てくることは当面ないため、数字的な追跡は決済サービス各社が出している決算や中間集計、各店舗が独自に出している月次集計、利用者や加盟店へのアンケート調査などから状況を把握するしかない。

 例えばインテージが19年12月4日に公表したアンケート調査結果によれば、ポイント還元導入前後で利用者のキャッシュレス決済比率は8.3ポイント増えて45.1%から53.4%へ、決済手段の比率は電子マネーが4.8ポイント増加して39.4%とクレジットカード+デビットカードの43.2%に迫る勢いとなっている。最も増加ペースが著しかったのがQRコードなどのコード決済サービスで、10.1%から17.4%と7割近い増加率だ。

1週間の日常の買い物におけるキャッシュレス決済手段利用率(出典:インテージ)

 この数字はあくまで参考値だが、「ポイント還元事業実施を契機に意図的にキャッシュレス決済手段を利用する層が一定以上いること」「キャッシュレス決済手段でクレジットカード以外の選択肢の認知度や利用が広まったこと」などが傾向として読み取れる。

 ポイント還元事業では加盟店側が対応している限り、決済手段の選択によって還元額が異なることはないため、単にクレジットカードからコード決済へ移っても還元額的なメリットはない。ただし、各決済業者のキャンペーンによりトータルでの還元額が異なる可能性はある。

 インテージの調査結果が実態に基づいているとすると、コード決済の利用率が上がったのは「コード決済サービスの方が(トータルの)還元率が高く、積極活用している」「よく行く店舗でクレカが使えず、コード決済や電子マネーしか選択肢がない」「決済手段と普段利用しているポイントプログラムが一体化しており、利便性が高い」といった理由が考えられる。

 コード決済をモバイルアプリを通じて提供している各社は「ポイント還元を通じて日常使いの習慣を利用者につけさせる」ことを目標の一つにしており、その点で目的はある程度達成できたといえるかもしれない。

 ただ、2019年を通しての取材で加盟店の声を聞いたところ、「(クレカに対応している加盟店の場合)キャッシュレス決済のほとんどはクレカ利用」「電子マネー利用の有無は商圏に依存する部分が大きい。例えば交通系ICの利用が多い都市部は交通系電子マネーが比較的利用される」「コード決済はキャンペーン時に大きく伸びる傾向があるが、それ以降は平準化する」といった意見が多かった。

 まず大前提としてクレカがあり、残りはそれを補完するような位置付けだ。コード決済比率は確かに19年後半に急増したが、全体からみればクレカがキャッシュレスの中心という状況に変化はないようだ。

例外的にPayPayが普及する理由

 一方で例外として挙げられるのがPayPayで、同社は19年11月18日に登録ユーザー数が2000万、加盟店数で170万を突破したことを公表するなど、商圏規模ではライバルから頭一つ抜きん出ている。同社の馬場一副社長によれば、全国の店舗数は370万あり(19年9月時点)、PayPay加盟店が全体の過半数を突破するのは時間の問題という状況だ。

 同社は加盟店に対し、21年9月までの時限措置で「決済手数料無料」をうたっており、「気に入らなければ、いつでも契約を止めていただいて問題ありません」というスタンスだ。これにより、これまで手数料などが理由でキャッシュレスな決済手段を導入してこなかった店舗を急速に取り込んでいる。

 店舗導入のハードルを下げる工夫は決済手数料無料の他にも、設置コストのかからない静的QRコードの採用などがある。店舗は用意されたQRコードを紙などに印刷して掲示し、消費者がスマホアプリで読み取って決済する仕組みだ。この方式なら店舗側が読み取り端末を用意する必要がなく、設置コストもゼロといっていい。

 このように導入のハードルを下げて加盟店を増やすことで、PayPayのビジネスモデルが生きてくる。彼らのビジネスモデルは「PayPayアプリを利用するユーザーと加盟店を増やし、アプリを通じて付加サービスや広告配信などで稼ぐ」というものだ。今後も単純な手数料の引き上げが難しいため、それよりもスケールメリットを生かして稼ぐ考えだ。

 地方での中小小売店の開拓は地元商工会を通じて営業をかけているが、その条件として「商工会に所属する小売の一定数以上をPayPay加盟店とすれば優遇措置を与える」などを提示しており、ローラー作戦でまずは加盟店で埋め尽くすことを最重要課題にしていることが分かる。

キャッシュレス決済としてはPayPayのみが利用可能な草津温泉のそば屋

コード決済普及でキャッシュレス化は進んだのか

 「コード決済はキャッシュレス化に貢献したのか?」という疑問だが、結論としては「一定レベルでは貢献したものの、やはりクレカが主役であることに違いはない」というのが筆者の意見だ。これは東京オリンピック・パラリンピックが終了する2020年時点でもあまり変化はないと思われる。ただ、PayPayなどのようにクレカ中心の経済を大きく変える存在が足元で急速に育ちつつあり、この普及率が一定以上となった20年後半、あるいは21年以降に「スマートフォンアプリを使ったモバイルマーケティングや決済」が本格化してくるのではないかと予想する。

  • 後編(2月1日公開予定):「NEC Pay」はいつ普及する? 「顔認証決済」「タッチレスゲート」は? 2025年のキャッシュレスを展望する

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