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ハーレーダビッドソン、アップル……。なぜ消費者は特定の企業を人のように愛せるのか? 行動経済学の権威、ダン・アリエリー(米デューク大学教授)は「企業と個人のとても強い関係が存在することは間違いないが、そう多くはない。例えば、一体どれくらいの人がウォルマートのタトゥーを入れる気になると思いますか?」と問いかける。(聞き手はPreferred Networks執⾏役員・最⾼マーケティング責任者の富永朋信氏)
ダン・アリエリー氏
デューク大学教授で、行動経済学をビジネスや政策課題に応用するコンサルティング会社「BEworks」の共同創業者。1967年生まれ。過去にマサチューセッツ工科大学のスローン経営大学院とメディアラボの教授職を兼務したほか、カリフォルニア大学バークレー校、プリンストン高等研究所などにも在籍。高価な偽薬(プラセボ)は安価な偽薬よりも効果が高いことを示したことから、2008年にイグ・ノーベル賞も受賞。『予想どおりに不合理』『不合理だからうまくいく』『ずる』『アリエリー教授の「行動経済学」入門』(いずれも早川書房)
富永 朋信 氏
Preferred Networks執行役員・最高マーケティング責任者
日本コカ・コーラ、西友などでマーケティング関連職務を歴任し、ドミノ・ピザ、西友など4社でマーケティング部門責任者を拝命。社外ではイトーヨーカ堂、セルムの顧問、厚生労働省年金局 年金広報検討会構成員、内閣府政府広報室 政府広報アドバイザー、駒沢大学非常勤講師などを務める。日経クロストレンドなど、マーケティング関連メディア・カンファレンスなどのアドバイザリー、ボードメンバーなど多数。著書に『デジタル時代の基礎知識「商品企画」』(翔泳社)
富永 次の質問は「なぜ消費者は企業を人のように愛せるのか。企業と個人の幸せな関係とは?」です。重要な部分は、人間と企業の関係がどうして人間同士の関係のようになり得るのか、ということです。すごく奇妙ですよね。
ダン そうですね。まず、一部の人が特定の企業を本当に愛していることに疑いの余地はありません。ハーレーダビッドソンが格好の例です。ハーレーのタトゥーを入れている人もいるくらいです。
私の住んでいるダーラムという街に「ブル・シティ・バーガー」というハンバーガー店があります。トイレに行くと、3種類のタトゥーが表示されていて、体にいずれかのタトゥーを入れたら、死ぬまでハンバーガーが23%割引になると書かれている。レストランのタトゥーを客に入れさせようとしているんです。
富永 そんなレストランが本当にあるんですね。
ダン 企業と個人のとても強い関係が存在することは間違いありません。ただ、そのような企業はそう多くありません。例えば、一体どれくらいの人がウォルマートのタトゥーを入れる気になると思いますか?
富永 (笑)それは面白い質問ですね。とても珍しいでしょうが、多少はいるかもしれません。
ダン アップルなら、もっといるでしょうね。そんなに一般的ではありませんが、確かに存在します。そのような企業が存在することは間違いない。その数が少ないことも間違いない。では、これは一体何なのでしょうか。
「市場規範」と「社会規範」
私たちが「市場規範」と「社会規範」と呼ぶものの違いはご存じですよね。市場規範では、私たちはお金のために何かをし、社会規範では、お互いを大事に思うから何かをする。
私がよく引き合いに出す例があります。家族の食事会に行き、食事の終わりに義理の母親に向かって「素晴らしいごちそうをありがとうございました。食事代として300ドル払います」と言うんです。これは恐ろしく失礼です。義理のお母さんは愛情や気遣い、思いやり、長期的な感情から、あなたのために料理をしてくれた。それなのに、あなたはお金を払うと言ったんですから。
さて、企業との関係の場合、お金の話になれば、これは報酬の関係です。「あなたはこれをやってくれたから、私はこれをしましょう」ということで、そこで関係が終わります。とても機能的です。一方、社会的な関係では、人は長期的にお互いを大事にし、目先のやり取りを超越した長期的な恩恵があります。それが得意な企業が、そのような忠誠心を獲得できる企業です。
そのためには、何が必要になるでしょうか。個々の取引以降も相手を大事に思っていることを相手に示す必要があります。相手の利益のために、自分が何かを失う覚悟を持つ必要がある。
例えば大学です。日本のことはよく分かりませんが、米国では、どこの大学へ行ったかによって人物評価が大きく決まります。大学教授として言えることですが、私は卒業生と話をすることがよくあります。こうした人は、すでに大学を卒業して、学費を払い終えた人たちです。もう二度と大学にお金を払いませんが、問題はそれではない。私たちは家族であり、一緒にいる、ということです。彼らは私の成功を喜び、私は彼らの成功を喜ぶ。私は彼らを手助けするために、自分の時間と労力を使うことをいといません。
富永 なぜでしょう?
ダン これは帰属意識、長期性と関係するインセンティブの一部です。例えばアップルは、ただ人が求めているものを与えているだけではなく、私が欲しがるもの、持っていないものを予想できるように見えます。
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March 10, 2020 at 03:01AM
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