神戸市は15日に開いたマンション管理支援制度検討会で、管理状況が良好な市内の分譲マンションを優良として認証する制度の創設案を取り下げる方針を明らかにした。代わりに修繕積立金の総額や滞納状況などを任意で公開する情報開示の仕組みを提示した。認証制度がなくても市場の評価材料になるとみている。年度内に詳細を詰め、2020年度の開始をめざす。
有識者らでつくる検討会に提示した案は管理状況に関する市への「届け出」と、市のホームページで管理の詳細を公開する「情報開示」の2本柱となる。届け出制度は規模を問わず、市内の全分譲マンションを対象に3年に1回、総会の毎年開催や積立金徴収の有無などについて届け出を義務付ける方針。自治会との交流や防災訓練実施の有無なども把握したい考えだ。
届け出をしたマンションを対象に、管理状況の詳細を外部からも評価できる情報開示制度を設ける。積立金徴収の有無だけでなく、積立金の総額や借入金の残高、大規模修繕の履歴や今後の計画などの公開を検討する。提出は任意で、毎年の情報更新を想定する。両制度とも管理組合の総会や理事会の議決を条件とする方針だ。
管理組合の設立や、管理状況の悪いマンションに対する適正な維持管理への支援も強化する。
市によると、市内の分譲マンションの管理組合は約3500(18年度)。認証制度については「管理組合から一気に書類が提出された場合、市に迅速な処理能力があるのか」といった懸念の声も上がっていた。
これに対し市は「情報開示できること自体がインセンティブになる。買う人に評価されれば情報開示を目指すようになる」(市住宅政策課)と説明する。情報開示の仕組みや開示内容を充実させることで認証制度までは不要と判断した。
マンションの適正管理制度をめぐっては、東京都が管理組合の届け出を受けて「優良」と評価する制度を運用している。ただ、積立金の総額や借入金の残高などの公開まで踏み込むのは全国でも初の試みとなる。
検討会に出席したマンション管理センター大阪支部の長田康夫支部長は「(マンションの比較で)統一的に出せるのは滞納件数と総額ぐらい。1年後に会計が悪くなるとマンション側が訂正しないケースもあるのではないか」と課題を指摘した。
神戸大学大学院の砂原庸介教授は「虚偽の情報で取引され、被害が出たときは論点になる。罰則は現実的でないが、自発的に正しい情報を出すような仕組みが必要だ」と述べた。
神戸市の久元喜造市長は15日の定例会見で、情報開示制度に関する新たな案について「強制するわけにはいかないが、適切な管理の要素として積立金や滞納の状況などは重要な情報だ。検討委員会で十分、議論していただきたい」と話した。市は年度内に制度設計案をまとめる考えだ。
(沖永翔也、小嶋誠治)
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January 16, 2020 at 02:00AM
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