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新型コロナウイルス対策に動く米国では、「サヴァイヴァル用品」が飛ぶように売れている|WIRED.jp - WIRED.jp

新型コロナウイルスの感染拡大に備える米国で、防災グッズやサヴァイヴァル用品が飛ぶように売れている。非常時に備えようとする人々が殺到したことで在庫が底をつき始め、売るものがなくなった専門店のほうが“非常事態”になりつつある。

WIRED(US)

JUDY

サヴァイヴァル用品セット「JUDY」は、カーダシアン家のメンバーがInstagramで紹介したために一躍有名になった。PHOTOGRAPH BY JUDY

デイヴィッド・サンダースは「何だか完全におかしな状況が続いていますね」と言う。「まったく初めての経験です」

サンダースは防災グッズや非常食などのオンラインショップ「Doomsday Prep」を経営する。つまり、前例のない異常な状況は専門分野だ。Doomsday Prepは非常用持出袋からラジオ受信機能のついた無線機、ヌンチャク、ナイフまでさまざまな商品を扱っている。

ショップの目的は顧客に非常時に備えてもらうためだが、いまはサンダース自身が“非常事態”に直面している。ショップのウェブサイトには「COVID-19の影響で在庫や入荷の状況は流動的です」というバナーが貼られている。一部の商品は夏まで入荷の見込みが立っていないという。

誰もが非常事態への備えに動きだした

サンダースがネットショップを立ち上げたのは2012年で、店の名前はナショナルジオグラフィックが製作したテレビドキュメンタリー「プレッパーズ~世界滅亡に備える人々~(原題:Doomsday Preppers)」からとった。番組では、経済の崩壊や大規模な自然災害などに備え、長い時間かけて準備してきたプレッパー[編注:大災害などに対処するため普段から生存術の習得や物資の備蓄などに取り組む人々]と呼ばれる人たちが紹介されている。

シェルター設置や食料備蓄などに取り組むのは、かつてはサヴァイヴァリズムの信奉者か一部のモルモン教徒くらいだった。ところが、いまでは年齢や性別、信仰する宗教、政治信条を問わず誰もが非常事態への備えを整えることに関心をもっている。もはや国民的娯楽と言ってもいいかもしれない。

特に、米国でも新型コロナウイルスの感染拡大の恐れが出てきた2月以降は、この傾向に拍車がかかった。市場調査会社ニールセンによると、医療用マスクの価格は4週間で4倍以上に跳ね上がり、アルコール消毒液の売り上げは73パーセント伸びた。販売拡大は今後も続く見通しだ。

『WIRED』US版が今回取材した防災グッズなどの専門店は、いずれも顧客の大半が都市部の住民だと説明する。防災対策などを紹介するウェブサイト「ThePrepared」を運営するジョン・レイミーは、「この集団に一定の特徴を見出すことができません。都市と地方、リベラルと保守といった、わかりやすい対立軸では語れないのです。文字通り、ありとあらゆる種類の人々で構成されています」と語る。

レイミーは10年以上にわたり災害対策分野にかかわってきたが、サヴァイヴァル関連の製品はここ数年で非常に充実してきたのだという。「それに数年前までは、極端な思想の持ち主がばらまくガラクタのような情報ばかりでした。例えば、地震に備えてどのような浄水フィルターを買うか調べようと思ったら、ヒラリー・クリントンが子供を誘拐しようとしていると熱弁を振るう男がYouTubeにアップロードした動画を最初から最後まで観る必要があったのです」

飛ぶように売れる非常グッズ

テレビやネットは大きな危機がやってくると警告し、米国全土で非常用持ち出し袋や食料品の備蓄セットが飛ぶように売れている。サヴァイヴァルギアを販売する「Uncharted Supply」の創業者クリスチャン・シャウフは、「これまでは社会に広まる前に消えてしまっていたメッセージが、急に人々に伝わるようになっています」と話す。

Uncharted SupplyはDoomsday Prepよりは一般的な品揃えで、アウトドア関連製品なども取り扱っている(シャウフ自身も「自分はプレッパーではない」と言う)。それでも専門店であることに変わりはない。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大で顧客が急増したという。

シャウフは「毎日、ブラックフライデー並みのトラフィックがあります。ここ数週間は、どの週も平常時の1カ月分の売り上げを記録しているほどです」と言う。すでにネット広告などはほとんど停止したが注文は止まらず、サイトのトップには「配送には2〜3週間ほどかかります」という注意書きが表示されている。シャウフは「新型コロナウイルスのためにすべてが売り切れ状態です」と説明する。

インテリアショップ「Pottery Barn」や高級百貨店「Nordstrom」のような有名店にも、防災関連用品が置かれている。女優のグウィネス・パルトローやオプラ・ウィンフリーもお薦めする「Preppi」の防災セットだ。ライアン・クールマンとローレン・タフーリが2014年に立ち上げた同ブランドは、ロサンゼルスに拠点を置く。

クールマンは「スーパーマーケットや薬局、ディスカウントストアなど、週末に買物に行くような場所では必ず販売されるべきものです。本来ならニッチな商品であってはならないのです」と話す。Preppiはブランドの設立当初、真面目に取り合ってもらえず苦労したという。「みんなに『変わってる』と言われたんですよ! 冗談じゃない。わたしたちは災害への備えに真剣に取り組む企業なんです」

Preppiはインフルエンサーには愛される一方で、本物のプレッパーたちからは相手にされないことが多い。例えば、サヴァイヴァル術を紹介するウェブサイト「offgrid.com」は、Preppiの商品を「高いだけでお金の無駄」と切り捨てる。参考までに、Preppiは過去に金の延べ棒の入った限定セットを10,000ドル(約108万円)で販売したことがある。ラッパーの2チェインズがバラエティ番組「Most Expensivest」で紹介して話題になった。

セレブが紹介した商品も人気に

10,000ドルはばかげているにしても、100ドル(10,800円)の防災セットはよく売れており、商品の供給が追いついていない(ちなみに現在も品切れ中だ)。自分で必要なものを買い揃えてバックパックに詰めるといったことをしたくない消費者を中心に人気がある。Preppiの防災セットには、カリフォルニア州で昨年発生した大規模な山火事のような事態を想定して、N95マスクが含まれているものが多い。需要が急拡大しているのは、これが大きいのではないかという。

クールマンは「ベストを尽くしています」と話す。「防災用品を販売している企業として、自分たちの備えが甘いことは許されません。顧客には非常事態対策をするよう勧めておきながら、『すみませんが在庫切れです』と言うことはできないでしょう」

ロサンジェルスなど南カリフォルニア以外の地域では、「JUDY」というサヴァイヴァル用品のセットが飛ぶように売れている。キム・カーダシアンをはじめとするカーダシアン家のメンバーがInstagramで紹介したからだ。JUDYはカーダシアン家の長年の友人であるサイモン・ハックが今年1月末に始めたブランドで、米国で起きている緊急対策ブームとちょうど重なったおかげで、有名人のお墨付きを待つまでもなく一部の商品は売り切れになっている。

ハックは「JUDYはパンデミックではなく、一般的な緊急事態を想定してつくられています。ただ、わたしたちは医療の専門家ではなく、製品に関して特定の効果があるといったことは宣伝したくありません」と言う。なお、米疾病予防管理センター(CDC)は、健康であれば新型コロナウイルスから身を守るためにマスクを着用することは推奨していない。JUDYのセットにはマスクも含まれているが、同社はソーシャルメディアなどにCDCのガイドラインを明記している。

特別なときだけのものではない

今回のパンデミックのために非常用品などが注目を集めているが、防災セットを販売する企業の多くが、自社の製品は特別なときのためだけのものではないと強調する。ハックはJUDYの開発段階で消費者の意見を聞いた結果、「日常における緊急事」にも焦点を当てるべきだと気付いたという。彼は「10歳未満のお子さんがいる家庭なら、擦り傷や打ち身といった理由で週に何回も救急箱を取り出しているはずです」と話す。

ジャーナリストのレイチェル・リーデラーは雑誌『Dissent』の2018年春号に掲載された記事で、プレッパーたちは「基本的に保守的」な思考の持ち主だと説明している。リーデラーは「プレッパーの特徴に公共システムに対する根深い不信感がある。さらに、一度何かが起きれば世界はすぐにホッブズ的な“自分(および家族)とそれ以外の戦い”という無秩序状態に陥るという信念が、その不信を支えている」と書いている。

彼女はまた、2016年の米大統領選挙でトランプが勝利したことで気候変動が引き起こす諸問題への危機感が増し、民主党支持者が多い州で緊急事態への備えについての関心が高まっているとも指摘する。

Preppiのクールマンとタフーリは、防災セットを商品化することで不安からは抜け出した。しかし、人々は連邦緊急事態管理庁(FEMA)は頼りにならないと感じているとも言う。Preppiで見た目のおしゃれさにこだわったのは、災害対策に関する会話を始めてもらいたいという気持ちが強かったからだ。

米国ではセーフティネットの脆弱さが浮き彫りになっており、国民の間に「公共システムへの強い不信感」が広まりつつある。ThePreparedのレイミーは、「防災用品を実際に使用する理由として最も多いのは、実は予期せぬ失業です」と語る。地震のための非常食は、食べ物を買うお金がなくなったときにも役に立つというわけだ。

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