知人女性から妊娠を告げられ、診察と称して麻酔をかけて勝手に堕胎、負傷させたとして、岡山の医師が逮捕された。その後の捜査で詳細が判明しつつあるが、2009年に起きた同様のケースを思い起こさせる事案だ。
どのような事件?
事件の経緯や状況などについては、次のように報じられている。
事件の2日後に主治医である産婦人科医が女性を診察したところ、胎児の心音が聞こえず、その経緯に不審な点があったことから、警察に通報して発覚した。
堕胎罪とは
刑法には殺人罪があるが、その対象である「人」といえるためには、胎児が母体から一部でも露出していなければならない。
そこで刑法は、胎児や母体を保護するため、自然の分娩期に先立って人為的に胎児を母体から分離すること自体を処罰の対象としている。妊婦の同意の有無などに基づき、次のように分類される。
(1) 自己堕胎罪
妊婦が薬物を用いるなどして自ら堕胎したら最高刑は懲役1年
(2) 同意堕胎・同致死傷罪
妊婦以外の者が妊婦の嘱託・承諾により堕胎させたら最高刑は懲役2年。その結果、妊婦を死傷させたら最高刑は懲役5年
(3) 業務上堕胎・同致死傷罪
(2)が医師、助産師、薬剤師、医薬品販売業者による場合、最高刑は懲役5年。その結果、妊婦を死傷させたら最高刑は懲役7年
(4) 不同意堕胎・同致死傷罪
妊婦の嘱託・承諾なしに堕胎させたら最高刑は懲役7年。その結果、妊婦を死亡させたら最高刑は懲役20年、負傷させたら最高刑は懲役15年
今回の医師は(4)の不同意堕胎致傷罪に問われている。堕胎罪の中でもかなり重い部類だ。
立件は珍しい
ただし、堕胎罪そのものは全体でも年間で0~数件程度しか検挙されていないし、その場合も書類送検にとどまっており、逮捕に至ること自体が珍しい。
表に出にくい犯罪であるうえ、次の要件をみたした場合、母体保護法によって人工妊娠中絶が適法となるからだ。
(a) 妊娠の継続・分娩が身体的・経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがあるか、暴行・脅迫により、または抵抗・拒絶することができない間に姦淫されて妊娠した場合
(b) 胎児が生命を保続することのできない妊娠満22週未満の時期に行う
(c) 医師会の指定を受けた指定医師が行う
(d) 妊婦本人の同意及び配偶者がいればその同意を得て行う(配偶者が意思表示できないときなどには本人の同意だけで足りる)
この結果、わが国では年間16万件もの人工妊娠中絶が行われている。
過去にも同様のケースが
その意味で、今回のケースはかなり異例だ。ただ、2009年にも東京慈恵会医科大学附属病院に勤務していた医師が似たような事件を起こしている。
交際していた看護師から妊娠を告げられたが、数日後に別の女性と結婚することが決まっており、破談を避けるため、栄養補給と称してこの看護師に子宮収縮剤を飲ませ、陣痛誘発剤を点滴するなどし、妊娠6週目の胎児を流産させた。
この医師は2010年に不同意堕胎罪で逮捕、起訴され、懲役3年、執行猶予5年の有罪判決を受け、2011年に医師免許を取り消されている。
今回は不同意堕胎罪ではなく、不同意堕胎致傷罪であるうえ、薬物で流産させたのではなく、自ら堕胎手術を施していることから、このケースよりも格段に刑事責任が重い。
生命や健康を守るべき医師が身勝手な動機からその立場や知識、経験を悪用して実行した計画的な犯行だということで、もし起訴されて有罪になれば、最低でも懲役5年程度の実刑を免れないのではないか。(了)
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August 13, 2020 at 07:07AM
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